鳥居龍蔵の手記

ある老学徒の手記 (岩波文庫 青112-1)作者: 鳥居龍蔵出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2013/01/17メディア: 文庫 クリック: 1回この商品を含むブログ (6件) を見る著者は明治から昭和を生きた、極東地域における人類学・考古学で大きな業績を残した大学者で…

中井久夫氏の新刊

「昭和」を送る作者: 中井久夫出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2013/05/23メディア: 単行本この商品を含むブログ (14件) を見る新刊が出れば買わずにはおれないという文筆家は、自分にはそう多くはないが、中井久夫氏は間違いなくその一人である。本書は…

「科学的お伽話」としての自由

自由は進化する作者: ダニエル・C・デネット,山形浩生出版社/メーカー: NTT出版発売日: 2005/05/31メディア: 単行本購入: 14人 クリック: 99回この商品を含むブログ (257件) を見る最初に断っておくが、自分は本書を隅から隅まできちんと読んだわけではない…

アメリカの黒人問題で思ったこと

アメリカ黒人の歴史 - 奴隷貿易からオバマ大統領まで (中公新書)作者: 上杉忍出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2013/03/22メディア: 新書この商品を含むブログ (6件) を見るアメリカの黒人(アフリカ系アメリカ人)の歴史は、奴隷状態から差別・解放へ…

『なめらかな社会とその敵』を読んで、雑感

なめらかな社会とその敵作者: 鈴木健出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 2013/01/28メディア: 単行本購入: 8人 クリック: 299回この商品を含むブログ (51件) を見るネットなどの評判からして、読んで否定的な感想を持つのではないかと予想していたが、さほど…

「暇と退屈の倫理学」とはね!

暇と退屈の倫理学作者: 國分功一郎出版社/メーカー: 朝日出版社発売日: 2011/10/18メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 13人 クリック: 146回この商品を含むブログ (128件) を見るこれは素晴らしい書物だ。著者はまだ若いが、今の若い人たちには驚くべき…

モームが通俗作家でもいいじゃないか

昔も今も (ちくま文庫)作者: サマセット・モーム,天野隆司出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2011/06/10メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 37回この商品を含むブログ (11件) を見る訳者解説によれば、批評家エドマンド・ウィルソンは本書を酷評したそうであ…

「国境を越える」とはどういうことか

〔増補〕国境の越え方 (平凡社ライブラリー)作者: 西川長夫出版社/メーカー: 平凡社発売日: 2001/02/07メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 29回この商品を含むブログ (51件) を見る上野千鶴子の本経由で読んだ。本書の解説も上野である。強靭極まりない書物…

上野千鶴子の『ナショナリズムとジェンダー』を読んでの、幼稚な感想

ナショナリズムとジェンダー 新版 (岩波現代文庫)作者: 上野千鶴子出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2012/10/17メディア: 文庫 クリック: 2回この商品を含むブログ (8件) を見る何という苦闘の書であろうか。本書で著者は、「従軍慰安婦」問題に渾身の力を…

弱者はとにかく生き延びよ、ということ(上野千鶴子を読んで)

生き延びるための思想 新版 (岩波現代文庫)作者: 上野千鶴子出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2012/10/17メディア: 文庫 クリック: 2回この商品を含むブログ (9件) を見る最後は感動した。著者の学問は、まず(モヤモヤとした)実感から始まる。結論は最初…

「シュレーディンガーの猫」って本当の話だったのか、どうか

「シュレーディンガーの猫」のパラドックスが解けた! (ブルーバックス)作者: 古澤明出版社/メーカー: 講談社発売日: 2012/09/21メディア: 新書 クリック: 19回この商品を含むブログ (3件) を見る古澤明氏のブルーバックスも早や三冊目で、前の二著が冴えてい…

難病とユーモアと日本(大野更紗を読んで)

([お]9-1)困ってるひと (ポプラ文庫)作者: 大野更紗出版社/メーカー: ポプラ社発売日: 2012/06/20メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 15回この商品を含むブログ (1件) を見る世評に高い本なので読んでみたら、評判どおり、凄い本だった。読み始めたら、巻を…

若桑みどりの描くフィレンツェ

フィレンツェ (講談社学術文庫)作者: 若桑みどり出版社/メーカー: 講談社発売日: 2012/06/12メディア: 文庫この商品を含むブログ (5件) を見る西洋美術史家である著者は、本書において、街路や広場という「空間」、歴史という「時間」、そこで生きた人々の心…

日本のマスコミよ、生まれ変われ!

「本当のこと」を伝えない日本の新聞 (双葉新書)作者: マーティン・ファクラー出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2012/07/04メディア: 新書購入: 2人 クリック: 123回この商品を含むブログ (39件) を見るまず断っておくが、本書は「際物」の新書ではない。著者…

独裁体制を倒し、民主主義体制を確立するための理論書

独裁体制から民主主義へ―権力に対抗するための教科書 (ちくま学芸文庫)作者: ジーンシャープ,Gene Sharp,瀧口範子出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2012/08/01メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 6回この商品を含むブログ (13件) を見る独裁体制を倒し、そ…

すべての能力は遺伝であるか

遺伝子の不都合な真実―すべての能力は遺伝である (ちくま新書)作者: 安藤寿康出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2012/07/01メディア: 新書 クリック: 19回この商品を含むブログ (34件) を見るこの本の主張は、強い言い方をすれば「人間のすべての能力は遺伝…

下からの社会主義化は可能か――ウィリアム・モリスの社会主義

ウィリアム・モリスのマルクス主義 アーツ&クラフツ運動の源流 (平凡社新書)作者: 大内秀明出版社/メーカー: 平凡社発売日: 2012/06/15メディア: 新書購入: 1人 クリック: 1回この商品を含むブログ (15件) を見る「アーツ&クラフツ運動」で知られるモリスだ…

人は「感性の限界」をどうしたらよいのか?

感性の限界――不合理性・不自由性・不条理性 (講談社現代新書)作者: 高橋昌一郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 2012/04/18メディア: 新書購入: 6人 クリック: 67回この商品を含むブログ (31件) を見る人気シリーズの第三弾。本書では「感性の限界」というこ…

科学理論の「美しさ」について

科学哲学講義 (ちくま新書)作者: 森田邦久出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2012/06/01メディア: 新書購入: 1人 クリック: 25回この商品を含むブログを見る題名通り、科学哲学についてわかりやすくコンパクトにまとめた本である。科学哲学というのはこれは…

「ふつうの」人の「ふつうの」人生を描く小説とは

生きる歓び (角川文庫)作者: 橋本治出版社/メーカー: 角川書店発売日: 2001/02メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 13回この商品を含むブログ (18件) を見る短篇集。ここに描かれているのはすべて、現代の「ふつうの」人の「ふつうの」人生だ。「ふつう」とい…

デフレは金持ちにはおいしすぎるのだ

庶民は知らないデフレの真実 角川SSC新書 (SSC新書)作者: 森永卓郎出版社/メーカー: 角川マガジンズ(角川グループパブリッシング)発売日: 2012/03/10メディア: 新書購入: 1人 クリック: 14回この商品を含むブログ (9件) を見るおもしろくて一気に読み終え…

クリプキと「名指し」の根源性について

名指しと必然性―様相の形而上学と心身問題作者: ソール・A.クリプキ,八木沢敬,野家啓一出版社/メーカー: 産業図書発売日: 1985/04/01メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 47回この商品を含むブログ (33件) を見る本書を読んで、いくつかの妄想が浮かんでき…

渡辺京二のドストエフスキー論

渡辺京二傑作選?ドストエフスキイの政治思想 (新書y)作者: 渡辺京二出版社/メーカー: 洋泉社発売日: 2012/03/06メディア: 新書この商品を含むブログ (3件) を見る本書を読んではっきりとわかったが、前から薄々は気づいていたのだけれど、自分はドストエフ…

震災復興の名目で利権をつくるということ

震災復興 欺瞞の構図 (新潮新書)作者: 原田泰出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2012/03メディア: 単行本購入: 9人 クリック: 183回この商品を含むブログ (21件) を見る大震災の復興費用として、政府は19から23兆円の予算が必要だといい、10.5兆円の増税が必要…

あまりにも厳しい学問と禅

増補 自己と超越――禅・人・ことば (岩波現代文庫)作者: 入矢義高出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2012/02/17メディア: 文庫この商品を含むブログ (3件) を見る『求道と悦楽』の続編である。 じつに厳しい学問と禅だ。著者は禅を、実践ではなく言葉と精神に…

土屋恵一郎の『怪物ベンサム』なる過剰の書

怪物ベンサム 快楽主義者の予言した社会 (講談社学術文庫)作者: 土屋恵一郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 2012/01/12メディア: 文庫 クリック: 3回この商品を含むブログ (16件) を見るベンサムというと、功利主義、「最大多数の最大幸福」とくるのが普通で…

分析哲学における「深層」の欠如

分析哲学講義 (ちくま新書)作者: 青山拓央出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2012/02/01メディア: 新書購入: 14人 クリック: 159回この商品を含むブログ (37件) を見るいやこれ、とてもいい本だ。自分の分析哲学に対する不満が、よく理解できた。結局分析哲…

科学者の社会的な責任という問題

「科学者の社会的責任」についての覚え書 (ちくま学芸文庫)作者: 唐木順三出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2012/01/01メディア: 文庫 クリック: 5回この商品を含むブログ (4件) を見る本書は昨年からの原発災害に関して出版されたものだと思うが、もともと…

岡崎武志さんの『古本道入門』

古本道入門 - 買うたのしみ、売るよろこび (中公新書ラクレ)作者: 岡崎武志出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2011/12/09メディア: 新書購入: 3人 クリック: 43回この商品を含むブログ (30件) を見るああ、面白かった。仕事場で空き時間に読む本にしよう…

いつもながら絲山秋子の小説はいとおしい

逃亡くそたわけ (講談社文庫)作者: 絲山秋子出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/08/11メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 12回この商品を含むブログ (102件) を見る絲山さんの小説は最高だ。読んでいて、「馬鹿」なんだが「いとおしい」という感想が、いつ…