グレン・グールドのザルツブルク・リサイタル盤
- アーティスト: グールド(グレン)
- 出版社/メーカー: SMJ
- 発売日: 2009/12/02
- メディア: CD
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まず、スウェーリンクの古雅な響きがいい。さほどポピュラーな曲ではないが、大バッハ以前としては、充実した曲だといえよう。対位法的な処理もグールドならでは。
このリサイタルの白眉は、シェーンベルクとモーツァルトだ。シェーンベルクは、驚くほど表現主義的で熱い演奏。こんなロマンティックなシェーンベルクは聞いたことがない。op.25は、シェーンベルクのピアノ曲の中では自分もいちばん好きな曲だが、この曲でエモーショナルな感動を覚えるとは、思ってもみなかった。必聴。
(たぶん)休憩をはさんで最初のモーツァルトだが、これがまたすばらしい。やたらと速いスタジオ録音盤とはまったく違って、グールドが素直にモーツァルトを弾いている! 第一楽章は素朴で愛らしい演奏。第二楽章は、何というか、クララ・ハスキルのモーツァルトのようだ。第三楽章は鳥肌の立つような名演で、ハスキルがキレをよくしたような、とでもいうか。ちょっと形容しようがない。
ゴルトベルク変奏曲はさすがにデビュー盤とさほどの違いはないが、ライブでも一瞬のたるみもなく、卓越した造形力とリリシズムを発揮している。これもデビュー盤よりも自然な演奏だといえよう。もちろん名演といってよい。(なお、このバッハの演奏だけは先に正規盤で発売されている。)
青柳いづみこ『グレン・グールド』
- 作者: 青柳いづみこ
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2011/07/01
- メディア: 単行本
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と、いろいろ思ったわけだが、あとがきで、「本書は、二〇〇九年春のある午後、音楽評論家の吉田秀和氏との語らいから生まれた」云々以下を読んで、いい加減な話だが、すべて納得してしまった。自分の思うところでは、著者は吉田氏以来最高の、音楽評論家でもある。そこでこのような繋がりがあったというだけで、ちょっと感動してしまった。それだから、このような重量級の著作になったのだろうかと、思われたりもする。
それにしても、DVD盤を持っていないのはそのうち買うとして、非正規盤はどうするか。多分買うことになるのかな。
これは細野晴臣の新境地だろうか?
- アーティスト: 細野晴臣
- 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
- 発売日: 2011/04/20
- メディア: CD
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それにしても、3曲目の「悲しみのラッキースター」の透明な悲しみは何だろう。聴いていて思わず、あまりの美しさに涙腺がゆるくなってしまったほど。たぶんさらりと書かれた曲なのだと思うが、すばらしいものだ。結局自分は、細野晴臣から抜けられないのだろうなと思う。
若きリヒテルのCD
- アーティスト: S. Richter
- 出版社/メーカー: Membran
- 発売日: 2011/02/15
- メディア: CD
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シューベルトのソナタD.958やシューマンのフモレスケは、既に大家の演奏。個人的にフモレスケは気に入った録音をもっていなかったので、これは有り難かった。
しかし、何を措いてもすばらしいのは、ロシア物だ。ラフマニノフの六つの前奏曲のスケールの大きさ(op.23-2など、すごすぎて唖然)。そして特筆すべきはスクリャービンの十二の練習曲。甘くてせつなすぎる。ホロヴィッツのもとてもいいが、同じ曲を比べると、このリヒテルの演奏は、若さが浸透しているとでもいうべきか。何と恰好いいスクリャービン! ちなみにラフマニノフもスクリャービンも、奇跡的にステレオ録音です。
マレイ・ペライアの弾くブラームス
- アーティスト: ペライア(マレイ)
- 出版社/メーカー: SMJ
- 発売日: 2010/11/24
- メディア: CD
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冒頭のヘンデル・ヴァリエーションズから聴かせる。この曲はそう好きでもなかったのだが、若々しくていい曲ではないか。ペライアは強烈な打鍵でインパクトを与えることもできるし、纏綿とした歌をうたうこともできる。構築力もある。(これらのことはすべての演奏について云える。)大好きなラプソディ第一番も、メリハリのついた演奏だ。旧録音よりもスケールが大きくなっている。ちょっとグールド晩年の録音が思い出されるくらいだ。
ブラームス最晩年の小曲集も、無骨だが、じっくりと聴かせる。op.118-8 Romance の中間部など、羽毛のような軽いタッチで聴かせることもできるだろうに、ごつごつと弾いて、これがまたいいのだ。それにしても、このペライアの演奏を聴いていると、op.118もop.119も、中にはじつに深い感情をたたえた曲が少なからずあることに気づかされる。複雑な陰影をもって、ロマンティックではあるのだが、何らかの諦念が込められたかのような――これは若い頃の曲にはない。
このディスクはたぶん此の後も聴くだろう。楽興の時だった。
フィッシャー=ディースカウの『ワーグナーとニーチェ』
- 作者: ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ,荒井秀直
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2010/12/10
- メディア: 文庫
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著者の筆はもちろん二人の決裂についても及んでいるが、後年のニーチェの著作の印象とは異なり、ニーチェはワーグナーに対し、とても礼儀正しく誠実だったように描かれている。実際そうだったのだろう。またワーグナーが一方的に責められるべきでもないようだ。両雄並び立たず、とでもいうべきかも知れない。ニーチェは最後までワーグナーに対して感謝の気持ちを忘れることはなかった。
しかし気になるのは、ワーグナーの妻コジマに対するニーチェの気持ちである。ニーチェ錯乱後の、有名なコジマへの手紙の文句は何なのだろう。アリアドネ… 著者はそれに対しては解決を保留している。
ルーズ・ランゴーの「天球の音楽」
Music of Spheres / The Time of the End (Hybr)
- アーティスト: Reuter,Bruun,Dnso,Dausgaard,Langgaard
- 出版社/メーカー: DACAPO
- 発売日: 2010/10/27
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