「セカイ系」という言葉を、聞いたことがありますか?

セカイ系とは何か (ソフトバンク新書)

セカイ系とは何か (ソフトバンク新書)

本書で言及されている作品や固有名詞に、それほど通暁しているわけではないし、「セカイ系」といっても様々だというのもわかるのだが、本書を読みつつ思うに、「セカイ系」というのは「無限の拒否」ということではないか。世界は無限なのに、意地悪な言い方かもしれないが、それが認められないのである。「ヴァーチャル」や「リアル」という言葉も、それに関係しているのではないか。今は「情報」の時代であるが、「情報」というのは、例えばネット空間がそうであるように厖大で、ほとんど無限のようにも思われるのだが、それは結局、有限数のジェネレーターによって作られたものであり(東浩紀のいう「データーベース構造」)、無限なフラクタル構造を持っていないのである。
 もっとも、だからといって、「セカイ系」など現実逃避でダメだ、などというつもりはない。それは、個人が、子宮を思わせる母性的な「安全球体」に閉じ込められている現在の状況に、正確に対応している想像力の質なのだと思う。
 いずれにせよ、本書は自分には教育的だった。本書に拠れば、セカイ系の代表作というのは、『最終兵器彼女』(マンガ)、『ほしのこえ』(アニメ)、『イリヤの空、UFOの夏』(小説)だそうである。うーん、『ほしのこえ』は観たな。あと、『エヴァンゲリオン』は別格として、『ブギーポップは笑わない』、「戯言遣い」シリーズ、『トップをねらえ!』、「涼宮ハルヒ」シリーズあたりが、本書で頻出。
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