古い科学本でも面白いのはありますよ

ヒマワリはなぜ東を向くか―植物の不思議な生活 (中公新書 (798))

ヒマワリはなぜ東を向くか―植物の不思議な生活 (中公新書 (798))

科学読み物として、これは面白い部類に入るものだ。植物の花が開くのに、何らかの「開花ホルモン」というものが存在する間接的な証拠がいろいろあるのに、これがまだ見つかっていないらしい。もしこれが見つかれば、どんな花でも(予想される「開花ホルモン」は、どの植物でも同じらしいことがわかっている)自由に開かせられるだろうに、そういう話は確かにまだ聞いたことがない。
 また、中学校の時の自由研究のテーマに朝顔の開花を選んだために、その不思議さに執り付かれ、とうとう著者の研究室に大学院生として入って、プロの研究者となってしまった人もいるそうだ。この人、朝顔は朝開くことは知っていたため、その開く様子を見ようと思ったのだが、いくら早起きしても、朝顔の花はすでに咲いている。ならば、夜中に起きてみて観察すると、もうつぼみが開きかけているのだ。ではと、夜中に開花する様子を写真に撮ろうと鉢を部屋に入れて待っていたのだが、今度は驚くことに、朝まで待っても開かない。これはどうしてなのだろう。夜の暗さが必要なのか…というのが、発端だったそうである。最初はこんな簡単そうなテーマなのに、調べれば調べるほど新たな疑問が湧いてくるというのは、研究者としてなんという幸せだろう。自然科学の面白さというのは、まさしくこういうものに他ならない。
 などなど、ちょっと古いが、いい新書本です。で、表題の、ヒマワリの花はどうして東を向くのかという疑問だが、これも是非、本書を繙かれたい。