押井守監督のアニメ『
イノセンス』のDVDを観る。劇場で公開されたときは、あまり高く評価しない人が少なくなかったように覚えているが、大満足だった。
サイバーパンクは以前から好きで、前作はきちんと映画館で観たのだけれども、最近は映画館から足が遠のいていたのだ。なんといっても、CGとセル画の混った、映像の美しさは無類である。近未来のアジア(香港?)風である、映像のSF的細部がいちばんの魅力で、堪能させられた。文学や哲学からのスノ
ビッシュな引用(例えば、レーモン・
ルーセルから「ロクス・ソロス」、
リラダンの『
未来のイヴ』から「
ハダリー」、ミルトンの『
失楽園』、
旧約聖書の
詩篇などなど)がいかにも
押井守らしく、筋書きをわざと分り難くくしているのも、過度に事件の背後を説明しない点、原作の
士郎正宗っぽくてよい。確かに、マンガの「
攻殻機動隊」のドライさに比べれば、本作の話はちょっとセンチメンタルとも云えようが、誇張して申せば、ストーリーなんかもうどうでもいいくらい、それほどの映像の美しさだった。いやほんと、最近は映画を観ていなかったので、(DVDでも)それだけで楽しかったです。