川上未映子の「イジメ」小説

ヘヴン

ヘヴン

なんとなく実験的な小説かなあと思って読み始めたのだが、まったく違っていた。「イジメ」を題材にした、ベタな小説である。現代の小説をあまり読んでいない自分の云うことだが、イジメを取り扱った小説で、ここまで深刻なものは初めて読んだ。リアリズムの小説を書かせても、川上は大変な筆力をもっていることがわかる。読んでいて、痛々しくてたまらないほどだ。主人公と百瀬の会話には慄然とした。成績優秀なのに、想像力と倫理の崩壊した少年。主人公を虫けらのように思い、それも殆ど無関心の中でやっている。どうでもいい、というのは、恐しい言葉だ。主人公が唯一心を許せるコジマも、結局自分のエゴで主人公に接していたのか、それともそうではないのか。最後のコジマの行動は、自分には謎だった。どうして高らかに笑ったのだろう。