「認識論的切断」以前としての向井敏
- 作者: 向井敏
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1993/04
- メディア: ハードカバー
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しかし、と思う。若い人らでこういうものを読んだことがないのなら、一度は読んでおいたほうがよいのかも知れない、と。ここにあるのは今の時代には閑文字だろうが、確かに、直ちに空疎ばかりではない。今や近代文学は死滅したが、近代文学の中で息をしてきた人たちの存在を、忘れてしまってよいものではないだろう。例えば柄谷行人などは今でも読み得る存在だが(いや、柄谷も古い、などと云わないでほしい)、柄谷もこういう中から出てきた批評家なのである。柄谷自身は、丸谷の引力圏にある存在など、ある意味では軽蔑しているのかもしれないけれども、やはりそうなのである。「近代」をすっ飛ばして、「徴候的」な文章を垂れ流しているようなのばかりになると、それはそれで、自家中毒を起こしそうな状況になっているのではあるまいか。