若きリヒテルのCD

Sensitive Eccentric

Sensitive Eccentric

旧メロディア音源で、スヴャトスラフ・リヒテルの1950年から1958年までの期間の録音をCD10枚に纒めた廉価盤である。年齢でいうと、リヒテル35歳から43歳までの間ということになり、三十代のリヒテルが聴けるというので興味津々だった。まだ一部しか聴いていないのであるが、音は悪いけれど、これいいですよ。まったく若き天才という感じで、バッハのクラヴィア協奏曲BWV1052とか、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第三番(第二楽章が名演)など、颯爽として恰好いいという他ない。指がまわりすぎるので、押さえて弾こうという風に聞こえるくらい、楽々と弾いている。
 シューベルトソナタD.958やシューマンのフモレスケは、既に大家の演奏。個人的にフモレスケは気に入った録音をもっていなかったので、これは有り難かった。
 しかし、何を措いてもすばらしいのは、ロシア物だ。ラフマニノフの六つの前奏曲のスケールの大きさ(op.23-2など、すごすぎて唖然)。そして特筆すべきはスクリャービンの十二の練習曲。甘くてせつなすぎる。ホロヴィッツのもとてもいいが、同じ曲を比べると、このリヒテルの演奏は、若さが浸透しているとでもいうべきか。何と恰好いいスクリャービン! ちなみにラフマニノフスクリャービンも、奇跡的にステレオ録音です。