九年前の原発トラブル隠しと岩波ブックレット

検証 東電原発トラブル隠し (岩波ブックレット)

検証 東電原発トラブル隠し (岩波ブックレット)

九年前の本である。九年前だから古い本なのだが、驚くべきは、現状は九年前と何も変っていないことである。ここで指摘されていることはずっと有効であり、仕上げは実際に地震が来ることだけであった。ここに、自分も含めた日本人に、何とも言えない絶望を感じる。なぜここまで問題がはっきり示されているのに、何も変っていないのか。例えば「原発の五重の安全性」。今ではその虚構性は誰にも明らかだが、本書には既に、「圧力容器と原子炉建屋は『壁』にならない」ときちんと指摘されてある。本書にわかりやすく説明された、原子炉の構造からして、当り前のことであるが、自分は「原発の安全性は多重に守られている」と信じていた。これで社会問題については多少知っているなどと自分では思っていたことからして、滑稽である。まあ自分が滑稽なのは仕方がないが、この未曽有の原子力事故が我々を少しでも変えねば、この震災が無意味になってしまう。それが一番おそろしい。