山下達郎の新譜『Ray Of Hope』

Ray Of Hope (初回限定盤)

Ray Of Hope (初回限定盤)

『SONORITE』から六年ぶりの、山下達郎のニューアルバムである。小学生の頃から、三十年にわたって達郎を聴いてきた者としては、どうしても買わざるを得ないのだ。『コージー』以降、伝統芸能化が進んでいる達郎の音楽だが、今回のアルバムも、音楽的にさほど目新しいものはない。相変らず見事なアレンジだし、相変らずカッコいいとは云える。まあ、自分にとっての達郎は、デビュー盤『CIRCUS TOWN』から、『SPACY』『GO AHEAD!』『MOONGLOW』の四枚のアルバムで殆ど尽きているのだが、いまの無害になった達郎も嫌いというわけではない。しかし、4曲目の「街物語」の冒頭が、まったくかつての達郎らしい、なつかしいリズムを刻みだしたときは、思わず反応してしまった。かつての「paper doll」や「rainy walk」などと同じリズムではないか! マイナーコード(短調)だけれど。これは昔の味なのだが、やっぱりコレだという感じだった。
 なんか、全体的にどうもメロディが catchy でない。思わず口ずさんで、知らないうちにリズムを取っているという曲が、少なくなったのは確かだ。いや、自分の感性が古くなったのかな。若い人は、本作をどう聴くのだろう。達郎の曲ではないのだが、Piaf の La vie en rose をアカペラでカヴァーしているのなど、超カッコいいと思うのだが。
 なお、初回限定盤にはライブ音源のサービス盤が付いているのだが、じつはこれがすばらしい。「素敵な午後は」が始まった途端、一気に惹きこまれた。達郎をよく聴いた学生時代のことが、ゆくりなくもいろいろ思い出されてしまった。
※追記 聴くたびに完成度の高さに圧倒される。ここまで完成されていれば、それだけでもういいという感じだ。ちょっと達郎でも、近年にない達成かも知れない。でも、「街物語」のリズムには、本当に昔の達郎を思い出してしまう。痺れる。(8/20記)