ポピュラー音楽の理論化に大統一理論は可能か
憂鬱と官能を教えた学校 上---【バークリー・メソッド】によって俯瞰される20世紀商業音楽史 調律、調性および旋律・和声 (河出文庫 き 3-1)
- 作者: 菊地成孔,大谷能生
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2010/05/01
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憂鬱と官能を教えた学校 下---【バークリー・メソッド】によって俯瞰される20世紀商業音楽史 旋律・和声および律動 (河出文庫 き 3-2)
- 作者: 大谷能生,菊地成孔
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2010/05/01
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本書はおそらく菊地成孔が主導していると云えるのでしょうが(実際に文章化したのは大谷)、この人の名はつい最近になるまで知りませんでした。こういうパラノイアックな離れ業が現在でも可能なのだということは、まったく驚くべきです。本書の元になった講義が行われているとき、菊池は精神的に不安定な状態にあったらしいのですが、こういう頭の使い方は、現代ではかなり危険だと云えるかも知れません。それだからこそ、これは貴重な仕事だと言うべきです。さて、本書を読んで自分がポピュラー音楽を聴くようになるかは微妙ですが、久しぶりにいわゆる「現代音楽」が聴きたくなってきました。これは突飛なことではありません。クラシックの「現代音楽」も、真に現代を生きていれば、問題意識が重ならないことはないでしょう。さても気になるのは、ポピュラー音楽は果して「無調化」するのだろうか、ということです。バークリー・メソッドは、あくまでも調性の上の理論だからです。本書を読んでいると、先端では既にそういうことにも足を突っ込んでいるようです。しかし、商業音楽までがそうなるのかと云えば、それはなかなかむずかしいのではないかとも思われます。