ハイテクの見せるゲージ場

電子線ホログラフィー、二重スリット実験*1、アハラノフ‐ボーム効果(AB効果)、マイスナー効果、磁束量子の可視化など、著者らが行ってきた輝かしい実験の解説が、主になされている。著者は最後に、「自分の成果の宣伝をしている」ような点をちょっと反省されていたが、なになに、話が具体的で、そこのところこそ面白かったと言いたい。第六章の「ゲージ場を見る」と、第七章の「超電導を見る」は、正直むずかしかったですけれど。AB効果というのは、電磁気学における「ベクトル・ポテンシャル」(これはもともと、数学的な仮定に過ぎず、電磁場のような実在するものではないと思われていた)が実在するというものだが、これってゲージ場でもあるのだな。超電導についてはあまり知らなかったので、勉強してみたくなった。
 それにしても、磁束量子が「顕微鏡」で見られるなどどいうのは、驚き以外の何物でもない。外部からかける磁場を変えると、磁束量子が移動していく様子まで、見えるというのだ。ちょっと前の本だが、それでもハイテクのとてつもない進歩を実感させる。著者は日立製作所の研究員で、一企業でよくここまで基礎的な研究ができたと思うし、一方で民間企業だからこそ、これほどのテクノロジーを手にすることができたとも云えるだろう。図版多数。

*1:二重スリット実験は、量子力学の殆どの教科書に載っているくらい有名なものだが、実際にこれを検証するというのは、あまりにミクロすぎる実験で、これまでなかなかむずかしかった。