梶谷懐による現代中国論の名著
「壁と卵」の現代中国論: リスク社会化する超大国とどう向き合うか
- 作者: 梶谷懐
- 出版社/メーカー: 人文書院
- 発売日: 2011/10/14
- メディア: 単行本
- 購入: 3人 クリック: 59回
- この商品を含むブログ (38件) を見る
しかしまあ、そんなに力みかえらなくとも、現代中国は主に経済的に、我々の日常において、既にしょっちゅうぶちあたる存在になっている。そんな日常的な疑問に答える本としても、本書は活用できる。例えば、中国の野菜が、スーパーの店頭から、相当の割合で消えてしまったことについて*1。これは、著者の視野の広さがもたらすものだと云ってよいだろう。
また、具体的には、現代の中国の内政事情、人権問題、チベットや新疆ウイグル自治区での紛争問題などでも、どのような視点に立てばよいかを考えさせてくれる。最後の村上春樹論も、村上春樹における中国の重要性を指摘して秀逸だ。真の知識人の書いた本だと云えるだろう。
※追記 改めて本書をぱらぱら見てみると、上の文章では言い尽くせていないところが多い。ネット上で他に信頼できる人の解説がみられるので、是非そちらも参照して頂きたい。
*1:もちろんこれは「食の安全」の問題なのだが、その問題に対しての日本人の「構え」を、著者は問題にするのである。