明治の元勲伝としての学術書
- 作者: 鳥海靖
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/11/11
- メディア: 文庫
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伊藤博文。
伊藤の本領は観念的な「憂国の志士」にあるのではなくて、実際的な「周旋家」としての才幹にあった。(p.94)
状況に応じた頭の切りかえのすばやさと、知恵才覚に富んだ点は、終生変わらぬ伊藤の身上であった。(p.97)
一方の山県有朋。
[松下村塾に]入門間もないある日、山県は松蔭から「君は死することが出来るか」と問われたことがあった。これに対し山県は、即答を避けて一日の猶予を乞い、一晩熟慮黙考した後、翌日あらためて松下村塾に至り、「私は国家の為ならば死することが出来ます」と答えたという。おそらく伊藤だったなら、打てば響くようにその場で答えたであろう。これは、若さに似合わぬ山県の慎重な性格をよくあらわすエピソードといえよう。(p.95)
酔っても決して我を忘れることなく、「和して同ぜず」というのが、山県の特色だったようである。(p.95)
二人はライバルだったとも云えるが、伊藤が暗殺されたあと、山県は伊藤を悼んで「かたりあひて尽くしし人は先だちぬ、今より後の世をいかにせむ」の歌を詠んでいるという。