日本の林業を論じた新書
- 作者: 田中淳夫
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2011/04/16
- メディア: 新書
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日本の林業のイメージというと、安い外材にシェアを奪われた、零細産業というものではないか。少なくとも自分はそういう感じだったのだが、意外なことに、国産材が売れるようになってきているというのである。中国などの木材需要が高まり、外材の価格が上がったためらしい。これは確かに慶賀すべき事実だが、問題がないわけではなく、需要はあるのに、国産材の価格は低迷しているという。この理由はあまりはっきりせず、本書によれば、木材が売り手市場から買い手市場にシフトしたためらしい。この国産材の価格低迷があるために、結局従来からの問題はあまり解決せず、大規模伐採によるハゲ山化など、あらたな問題が起きてきている始末である。
もちろん、意欲的な仕事をしている企業・団体はあるのであって、とにかく林業は現代ビジネスの常識が導入されていない、旧態依然の部分が多く、それを(効率の追求など)ビジネスとして当り前の形態にすることで、成功しているところもある。これはもちろん当然のことだ。しかし弊害もあって、例えば重機を導入し、稼働率を上げることにより、山をどうしても痛めることになりかねない、という問題もある。ここらあたりはむずかしいところだ。
で、最終的な鍵は、やはり若い人を林業に呼べるか、というところである。若い人で森の仕事をやりたいという人は少なくないらしく、実際に就業する人たちもいるのだが、なかなか続かないという。林業は日当制が多く、ボーナスもなしというのが多いから、これではやっていけない。男性でも、結婚と同時にやめざるを得なくなるということがあるようだ。また、はっきり云って危険な職業でもあるし。他業と比べ、事故率はかなり大きいのである。
そして、本書に詳しくは書いていないが、補助金の問題もある。林業は補助金が相当に注入される職種であるが、これは利権を産むし、山主や林業家を堕落させる元にもなっている。これもむずかしい問題だ。正直言ってこういう話は嫌になってくる。林業のために与えられる補助金が、林業を腐らせる。こうなると、林業が衰退するのは、自業自得であると云いたくなる。