ショパンの二十四の前奏曲など、ポリーニの新譜

ショパン:24の前奏曲

ショパン:24の前奏曲

ポリーニの新譜である。前にも書いたと思うが、ポリーニのピアニズムがどんなにダメになっても、自分はポリーニの新譜が出るたび買い続けなければならない。自分にとって、ポリーニはそういうピアニストだ。
 スタジオ録音であるが、「ショパン・リサイタル」と云った趣のアルバムだ。収録された曲はすべてショパンで、二十四の前奏曲ノクターンop.27の二曲、マズルカop.30の四曲、それにスケルツォ第二番である。マズルカ以外は、ポリーニはすべて既に録音していて、再録音になっている。
 さて、予想されるとおり、ポリーニのピアノは成熟の方に向かっている。しかし、前に出たブラームスの協奏曲の録音を聴いたときにも薄々感じられたが、ポリーニはまた、何か新しいことを始めてしまったかのようにも聞こえる。そしてそれは、若い頃は完璧主義者と云われたくらいなのに、まだ「未熟」だとも云えるものだ。二十四の前奏曲は、そうしたところが顕著だと感じる。若い頃、七〇年代の録音の方が、完璧かもしれない。だから、今回の演奏はと云えば、まだよくわからないところが残る。いずれにせよ、この年齢になってのポリーニの挑戦を感じずにはいられない。
 よかったのはノクターンマズルカだ。共に曲の深みが、今のポリーニにぴったりである。特に、ノクターンのop.27-2が名演だ。マズルカがこれだけいいと、ポリーニには全曲の録音も期待したくなってしまう(無理だろうが)。
 スケルツォ第二番は、悪くないし、完成度は高いが、旧録音の方が鮮烈だろう。