樹を植え続ける「学問バカ」の生涯
- 作者: 宮脇昭
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/04/18
- メディア: 新書
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このような緑とのつきあい方は、我々の生にとっても実際重要なことである。それにしても、著者は自ら省みて学問ばかりの一生であり、家族にも迷惑をかけたようなことを書いているが、もうこうした生き方は今では許されないかも知れない。しかし、学問バカというこれもまた、見事な人生ではないだろうか。
※付記 本書は「熱い」本だ。著者の性格のせいか、必要以上に(?)「熱い」かも知れない。本人が云うように、著者はまるで「狂気」のような熱意で学問をやってきた。植林もそうで、ダメな植樹は「ニセモノ」呼ばわりまでしたそうである(「天敵」と呼ばれたのも、著者自身そのせいだと云っている)。しかし、その背後には学問の力があることを、決して見落としてはならない。著者は学問を曲げることが出来なかった。有効な植樹法の発明も、完全に学問的な論理と背景によってなされている。そこのところが非凡なのだ。例えば「潜在自然植生」は著者のドイツ人の師の作り出した概念であるが、著者はそれを完全に自家薬籠中の物にしたのである。その日本における対応物は「鎮守の森」であった。「鎮守の森」が五〇〇年、一〇〇〇年と生き続けてきた理由はそこにあり、著者がそれを学問的に発見したのである。