日本の子供たちと貧困

子どもの貧困―日本の不公平を考える (岩波新書)

子どもの貧困―日本の不公平を考える (岩波新書)

本書について、どう書こうか迷う。自分は本書を極めて感情的に読んでしまったが、これは誤った読み方であろう。貧困問題については、きちんとしたデータを基に、冷静かつ論理的に語られるべきであるからだ。例えば、「完全な平等などは無理なことだから、貧困者がいても仕方がない」という議論は間違っているのだが、それに対する反論は、あくまでもきちんとした議論で以てなされねばならないのである。また本書では、日本の母子家庭の悲惨な現状が書かれているのだが、「勝手に離婚したのだから、母子家庭が苦しいと言っても自業自得である」というような誤った議論についても、同様である。本書は子供の貧困問題について、そうしたきちんとしたデータに基づく、冷静な議論に終始していると云えるだろう。しかし、自分は正直言って、本当に日本というのは酷い国だと、そういう情緒的反応を以てしか本書を読めなかった。ダメである。そう、唐突であるが、人間には、最低限の人間らしい暮らしができる、そうした権利があるのではないだろうか。世界の中でも特に日本は、そうしたことが忘れられている、或は無視されている国なのではなかろうか。そうした思いを禁じ得ない。さらに本書に拠れば、日本は国家による富の再配分の過程で、子供の貧困率が上昇する(恐らく唯一の)国なのである。つまり日本では、子供を搾取していると言ってもいい。まったく、これ以上何をか言わんや。
 付記しておけば、本書は多少古い本である。現在の事情はどうなのか、自分は知らない。事態が改善されていることを望む。さらに云えば、このような現状が続けば、子供たちはそれに対して生き方を合わせてくるだろう。それが日本の将来に明るさを増す方向にあれば、幸いである。