商店街に客がこないのは必然ではない

これは面白かった。自分は商店街の再生に何の関係もないし、特に情熱もないが、地域商店街の衰退は時代の流れの必然なのだろうと、漠然と思っていた類であった。家の近くの商店街は那加駅前のそれだが、人の歩いている姿は殆ど見ないし、岐阜県のかつては有名だった柳ヶ瀬の商店街も、今は完全にシャッター商店街と化している。結局、人の流れは、郊外のショッピング・モールに集まるのは必然だと思えた。いや、今でもそれはそうだとは思うのだが、本書を読むと、それなりに商店街に人を呼び返すことは、やりようによっては充分可能なのだと納得させられた。というのも、市役所などの地方自治体は、商店街の再生ということに必ず取り組んでいるからである。そして、それが必ずしも上手くいかないのは、市役所職員や商店街の当事者のやり方というか、やる気の問題なのだと痛感させられたわけだ。とにかく、問題の商店街関係者の多くは、考えが甘すぎる。本書は、そういう安易な奴らにとても厳しい。大切なのは、キーワードの「お客様目線」「客は何を望んでいるか」をはっきり知ることで、まあ、当り前のことなのだが、これがまったく出来ていないところがあまりにも多い。で、真剣味もなかったり、とか。本書で初めて知ったのだが、どうしてシャッター店舗にするかというと、相続税などの節税対策なのだそうだ。そういう背景があるからこそ、あれだけシャッター店舗になる筈である。
 本書は著者の情熱が横溢していて、その熱意に巻き込まれて読んでしまうところもある。だから、商店街に関係がなくとも、あっという間に読まされた。仮に自分が何か店を始めるなんてことになったら、本書は絶対に参照するだろう。しかし、本書を読むと一方で、誰でも上手くいくわけでもないことはそうだと思う。やはり、成功する人は魅力的なところ、他人を惹きつけるところがあるようだ。やる気とアイデアも必要だろう。それでも、コツのようなものはあるわけで、そういう部分を読み取るべきだろう。やる気のある人たちへの応援本。著者の前著もこの新書に入っているようだから、それも読んでみたくなった。