エピジェネティクスと獲得形質の遺伝
- 作者: 仲野徹
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2014/05/21
- メディア: 新書
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で、本書を読んでいってある程度理解できれば、著者が口を濁しているところがわかるかも知れない。それは、エピジェネティクスが一種の「獲得形質の遺伝」をもたらすのではないか、というものである。獲得形質の遺伝は現代の生物学では完全に否定されているので、ここはどうしても慎重にならざるを得ないのであろう。しかし、以前から「異端的」な研究者たちによって、獲得形質の遺伝を考えに入れないと説明しにくいような現象が見出されているので、それが可能になるかどうかは大問題である。自分個人もこのあたりは非常に興味深いものを感じるのであるが、一方では、受精卵においては殆どのDNAメチル化(すなわち獲得形質)が消去され、リプログラミングが生じるらしいから、簡単に断言できることではない。というか、まだ何が正しいのかははっきりしていないと云えるだろう。
それでも、遺伝には関係があるとも思われていなかったヒストンが、遺伝子発現に影響を与えるなど、とても面白い学問分野であることは間違いあるまい。本書が初学者には難解というのは、だから残念でないこともないのである。エピジェネティクスに関する他著も、読んでみたい気を起こさせる。