『存在の耐えられない軽さ』以上のミラン・クンデラの傑作
- 作者: ミラン・クンデラ,西永良成
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2014/12/17
- メディア: 文庫
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その他の章も読み応えは充分であり、その体験をくぐり抜けたルドヴィークは、自分を陥れたゼマーネクに復讐しようとするのであるが、あとは読んでのお楽しみということにしたい。本書には自分にはよくわからないところも少なくなく、特にヤロスラフと「王様騎行」のエピソードは、本書の中で他と遊離している感がある。また、ルツィエとの再会も、プロットからすれば殆ど意味がない。けれども、それを除けば、小説の謎も失われてしまうようでもあるし、自分には何とも言えないのだが。なお、本書は1968年のソ連軍のチェコ侵攻以前のエピソードであり、ソ連軍の侵攻は、本書を政治的文脈で読むことを時代に強要してしまったところがあるらしい。しかし自分は、本書の文学的価値を強調したいと思う。これは本物の小説であると確信している。
蛇足であるが、本書は著者の手が全面的に入った、最後のフランス語版から翻訳されている。日本語として見る限り、立派な翻訳であると思う。岩波文庫に相応しい古典であろう。