僕の好きなシジン

雨過ぎて雲破れるところ

雨過ぎて雲破れるところ

最近読んでもっとも魅力的だった本。なんと云うか、佐々木さん(本書では「シジン」と呼ばれている)の文章には、僕は極めて惹きつけられるし、感動的である。これはどういう魅力なのだろう。シジンその人の魅力なのか、本書は嬬恋村での山小屋生活の記録なのであるが、ここにはどんどん人が集まってくる。それがまた、皆素晴らしく生き生きとしているし、子供たちもまわりで(ガンガン殻をやぶって)成長していく。皆の遊び方がまた本当に楽しそうだ。特に、自発的な音楽に溢れていて、プロも個人的に来るし、そのプロたちとの相乗効果で、山小屋仲間たちも(子供たちも)湧き上がるように音楽と交流している様子が感動的である。いやもう、自分の文章力のなさが残念である。こういうのが「生きる」ということなのではないか。
 佐々木幹郎という人は最近まで知らなかったが、僕にはこの人は「ちょっとちがう」ように思われる。どこか、生命の根源に触れている人ではないかと感じる。世の中には色んな「詩人」がいるが、こういう人こそ本当の詩人なのではないか。シジンの手にかかると、生きるというのは何と楽しいことか。手垢にまみれた言葉だが、僕はこの人はホンモノだと思っている。是非、詩集も読んでみたい。