阿部謹也と「世間」その二

「教養」とは何か (講談社現代新書)

「教養」とは何か (講談社現代新書)

この本は題名からすると一応、「教養」について語るもののように思えるが、実際は著者の「世間論」の系統([id:obelisk1:20080525])のそれに属する。そして、著者が喉まで出かかって言わないのが、日本の「世間」というものに対する深い嫌悪であることは、ほとんど明瞭である。であるから、著者が言っていること自体ははっきりしているのに、論旨があちらこちら飛び、全体の関連が見にくくなっているのは否めない。「建前」と「本音」が使い分けられている日本では、西洋型の「教養」を身に付けるのは結局無駄なことで、すべては「世間」に即して決められる、そのようなことが仰りたいのであろうか。
 いまだって「世間」は健在である。テレビなど、現代のマスメディアが「世間」となって個人に襲いかかっていく様子を見ていると、そら恐ろしいような気持ちにさせられるのである。