2010-01-01から1年間の記事一覧

夭折の天才数学者・ガロアの生涯

ガロア―天才数学者の生涯 (中公新書)作者: 加藤文元出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2010/12/01メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 72回この商品を含むブログ (20件) を見る著者の前著には感心させられていたので、期待した。著者は数学の専門家なの…

これこそ現代における文学ではないか・絲山秋子

沖で待つ (文春文庫)作者: 絲山秋子出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2009/02/01メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 16回この商品を含むブログ (59件) を見る著者はいま自分のいちばんしっくりくる作家だ。でも、しょっちゅう読んでいるわけではない。なぜ…

松浦寿輝詩集

松浦寿輝詩集 (現代詩文庫)作者: 松浦寿輝出版社/メーカー: 思潮社発売日: 1992/04メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (10件) を見る本書には、詩集『ウサギのダンス』全篇と詩集『冬の本』全篇が収められているが、とりあえず前者のみにつ…

現代に生きる禅

笑う禅僧─ 「公案」と悟り (講談社現代新書)作者: 安永祖堂出版社/メーカー: 講談社発売日: 2010/11/18メディア: 新書購入: 1人 クリック: 2回この商品を含むブログ (7件) を見る新書でさらりと刊行されたが、大変な書である。こんな禅師が、現代に存在する…

「株主資本主義」は間違っている

新しい資本主義 (PHP新書)作者: 原丈人出版社/メーカー: PHP研究所発売日: 2009/04/16メディア: 新書購入: 12人 クリック: 57回この商品を含むブログ (38件) を見る「千夜千冊」で紹介されていたものである(参照)。著者の気合が熱い本だ。著者は、会社は株…

青柳いづみこの楽しいエッセー集

モノ書きピアニストはお尻が痛い (文春文庫)作者: 青柳いづみこ出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2008/11/07メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 6回この商品を含むブログ (13件) を見る楽に読めるがおつゆたっぷり、という本が読みたかったのだが、これを選…

最底辺労働者について

ルポ 最底辺―不安定就労と野宿 (ちくま新書)作者: 生田武志出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2007/08メディア: 新書購入: 17人 クリック: 171回この商品を含むブログ (87件) を見る本書を読んでよかったとつくづく思う。日本にも、ジョージ・オーウェルや、…

カルダーノ自伝

カルダーノ自伝 (1980年)作者: ジェロラモ・カルダーノ,清瀬卓,沢井茂夫出版社/メーカー: 海鳴社発売日: 1980/11メディア: ?この商品を含むブログ (2件) を見る著者は十六世紀イタリアの人で、一般に三次方程式の解の公式の発見者として知られているが、本人…

古書店と文学――関口良雄『昔日の客』

昔日の客作者: 関口良雄出版社/メーカー: 夏葉社発売日: 2010/10メディア: 単行本購入: 10人 クリック: 143回この商品を含むブログ (55件) を見る著者は古書店・山王書房の店主で、昭和五十八年に五十九歳で亡くなった。本書はその遺稿集で、入手困難になっ…

ミヤザワケンジにタメを張る高橋源一郎

ミヤザワケンジ・グレーテストヒッツ (集英社文庫)作者: 高橋源一郎出版社/メーカー: 集英社発売日: 2010/10/20メディア: 文庫 クリック: 3回この商品を含むブログ (14件) を見るこれ、大傑作すぎて、形容の言葉がない。宮沢賢治の詩や童話から題を借りた連…

幾何学文様の美とペンローズ・タイル

エッシャーとペンローズ・タイル (PHPサイエンス・ワールド新書)作者: 谷岡一郎出版社/メーカー: PHP研究所発売日: 2010/05/21メディア: 新書購入: 1人 クリック: 97回この商品を含むブログ (12件) を見る画家エッシャーのことを知っていられる方は少なくな…

安藤礼二、畏るべし

場所と産霊 近代日本思想史作者: 安藤礼二出版社/メーカー: 講談社発売日: 2010/07/29メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 29回この商品を含むブログ (18件) を見る何という高い飛翔! 安藤礼二、畏るべし。近頃読んだ本で、これほど興奮と感嘆を誘ったもの…

リヒテルのリサイタル盤

Beethoven: Andante / Chopin: Op.34,31,60 / Debussyアーティスト: Sviatoslav Richter出版社/メーカー: Orfeo D'or発売日: 1998/11/01メディア: CDこの商品を含むブログ (2件) を見るリヒテルのリサイタル盤を聴く。1977年8月26日のザルツブルグ音楽祭にお…

橋本治の「哲学書」

いま私たちが考えるべきこと (新潮文庫)作者: 橋本治出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2007/03メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 23回この商品を含むブログ (39件) を見るそう見えないかも知れないが、本書は実は「哲学書」である。それがそう見えにくいのは…

超人的な記憶力の学術的記録

偉大な記憶力の物語――ある記憶術者の精神生活 (岩波現代文庫)作者: A.R.ルリヤ,天野清出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2010/10/16メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 44回この商品を含むブログ (15件) を見るこれは面白い学術書だった。或る超人的な記憶力…

押井守監督の『イノセンス』を観る

イノセンス スタンダード版 [DVD]出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社発売日: 2004/09/15メディア: DVD購入: 5人 クリック: 148回この商品を含むブログ (510件) を見る押井守監督のアニメ『イノセンス』のDVDを観る。劇場で公開された…

よき生と死を得るための、素晴しい本

チベットの生と死の書 (講談社+α文庫)作者: ソギャル・リンポチェ,大迫正弘,三浦順子出版社/メーカー: 講談社発売日: 2010/09/21メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 6回この商品を含むブログ (6件) を見るこのような素晴しい書物を称揚するのに、自分の力が…

橋本治の繊細極まりない短編集

つばめの来る日作者: 橋本治出版社/メーカー: 角川書店発売日: 1999/07メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見るそれほど期待もせずに読んだのだが、繊細極まりない短編の数々に、感動させられた。市井の人々の日常を淡々と描いて、例えばモーパッ…

「ストラスブール美術館所蔵 語りかける風景」展に行ってきた

多少空き時間があったので、岐阜県美術館の「ストラスブール美術館所蔵 語りかける風景」展に行ってきた。印象派前後の、十九世紀のフランス絵画が中心で、ビッグ・ネームこそ少なかったものの、とてもよかった。個人的に最近はナマの西洋画を観ていなかった…

ブーレーズ指揮のマーラー『子供の不思議な角笛』と第十番アダージョ

Mahler: Des Knaben Wunderhorn / Adagio From Symphony No 10アーティスト: G. Mahler出版社/メーカー: Deutsche Grammophon発売日: 2010/10/05メディア: CDこの商品を含むブログ (1件) を見るマーラー最初期の歌曲集『子供の不思議な角笛』と、絶筆となっ…

古い科学本でも面白いのはありますよ

ヒマワリはなぜ東を向くか―植物の不思議な生活 (中公新書 (798))作者: 滝本敦出版社/メーカー: 中央公論社発売日: 1986/03メディア: 新書購入: 2人 クリック: 3回この商品を含むブログ (6件) を見る科学読み物として、これは面白い部類に入るものだ。植物の…

日本史に対する女性からの視点

日本〈聖女〉論序説 斎宮・女神・中将姫 (講談社学術文庫)作者: 田中貴子出版社/メーカー: 講談社発売日: 2010/09/13メディア: 文庫 クリック: 6回この商品を含むブログ (4件) を見る著者の本は、『外法と愛法の中世』や『百鬼夜行の見える都市』などが個人…

『抱擁家族』を読んでみた

抱擁家族 (講談社文芸文庫)作者: 小島信夫,大橋健三郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 1988/01/27メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 35回この商品を含むブログ (72件) を見るいわゆる「第三の新人」は、何となく膚に合わないような気がしていて、今まであま…

ディキンソンの詩に驚嘆する

対訳 ディキンソン詩集―アメリカ詩人選〈3〉 (岩波文庫)作者: エミリーディキンソン,亀井俊介出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1998/11/16メディア: 文庫購入: 5人 クリック: 30回この商品を含むブログ (32件) を見る自分はあまり詩を読まないほうですし、…

多様体論でこんなに楽しい本が書けるとは!

エキゾチックな球面 (ちくま学芸文庫)作者: 野口廣出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2010/08/09メディア: 文庫 クリック: 17回この商品を含むブログ (15件) を見る著者のトポロジー本は、同じちくま学芸文庫に収められている『トポロジーの世界』が名著だっ…

福島家族旅行

二泊三日で福島へ行ってきました。これで中通り、浜通り、会津すべて制覇(?)。宿は二泊ともハズレでしたが。とにかく暑かったです。そうそう、磐越東線なぞに乗ってしまった。観光の細かい話は「備忘録」にあります。

あらためて「スタイリスト」石川淳を思う

石川淳短篇小説選―石川淳コレクション (ちくま文庫)作者: 石川淳,菅野昭正出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2007/01メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 12回この商品を含むブログ (20件) を見る石川淳の短編アンソロジー。ちょっと読んだだけで、すぐに誰の…

絲山秋子の奇跡的な小説

海の仙人 (新潮文庫)作者: 絲山秋子出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2006/12/22メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 30回この商品を含むブログ (166件) を見る奇跡的なすばらしい小説です。読んでください。そう云ってこれ以上何も書かないというのが、本当は…

魔都上海

魔都上海 日本知識人の「近代」体験 (ちくま学芸文庫)作者: 劉建輝出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2010/08/09メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 14回この商品を含むブログ (7件) を見る日本及び日本人にとっての上海が、いかに重要だったかという視点で…

永井均の画期的な「独我論」

〈私〉の存在の比類なさ (講談社学術文庫)作者: 永井均出版社/メーカー: 講談社発売日: 2010/07/12メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 13回この商品を含むブログ (13件) を見る柄谷行人は、西洋哲学には「この私」がいないと言ったが、著者の「この私」は、…