- 作者: 劉建輝
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2010/08/09
- メディア: 文庫
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その後、開国して力を蓄えてきた日本にとって、上海は違った姿で見られるようになった。明治人らは上海を、一種の「ロマン」として捉えるようになったのである。上海で一旗挙げようという者、上海を訪れた文学者たち…。そしてさらに大正になると、作家たちの中に上海に耽溺する者が出てくる。その中では、谷崎潤一郎や金子光晴などの例が面白かった。彼らは上海に、デカダンスを感じていたのだった。
しかし著者に拠れば、日本軍の上海占領の後、上海は混沌とした魅力を失っていったようである。日本軍は上海を、ただののっぺりとした都市に変えてしまった。そして上海が再び大きく変貌するのは、経済の開放政策によって、中国における資本主義の拠点となってからのことだった。それは、今の上海万博に繋がっているだろう。中国はこのあと、上海をどのような方向にもっていこうとしているのだろうか。上海と日本との関係も、今後まったく絶えてしまうことはあり得ない。むしろ、そこが将来の日中関係を占う、ひとつの特異点となるのかも知れない。