なんとなく頁をひらいた

「微分」「積分」という語の出てこない(!)微積分の本

微積分入門 (ちくま学芸文庫)作者: W.W.ソーヤー,Walter Warwick Sawyer,小松勇作出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2015/10/07メディア: 文庫この商品を含むブログ (2件) を見るこれはユニークな本だ。微積分を教える本なのに、lim すら出てこない。という…

ハリヨと自然保護

トゲウオのいる川―淡水の生態系を守る (中公新書)作者: 森誠一出版社/メーカー: 中央公論社発売日: 1997/06メディア: 新書 クリック: 2回この商品を含むブログを見る何の予備知識もなしに読んだが、敢て名著だと云っていいだろう。著者はトゲウオ類の研究者…

維新史を書き換える画期的な歴史書

江戸幕府崩壊 孝明天皇と「一会桑」 (講談社学術文庫)作者: 家近良樹出版社/メーカー: 講談社発売日: 2014/02/11メディア: 文庫この商品を含むブログ (5件) を見る元本は、文春新書の『孝明天皇と「一会桑」』。何の気なしに読み始めたのだが、そうしたら驚…

農業とマーケットの論理

農業が日本を救う作者: 財部誠一出版社/メーカー: PHP研究所発売日: 2008/11/22メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 13回この商品を含むブログ (5件) を見る著者の顔は「報道ステーション」で何度か見かけたことがある。氏のレポートはいつもポジティブで、…

商店街に客がこないのは必然ではない

商店街再生の罠:売りたいモノから、顧客がしたいコトへ (ちくま新書)作者: 久繁哲之介出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2013/08/07メディア: 新書この商品を含むブログ (10件) を見るこれは面白かった。自分は商店街の再生に何の関係もないし、特に情熱もな…

食卓に表れる日本人の変容

日本のリアル 農業・漁業・林業 そして食卓を語り合う (PHP新書)作者: 養老孟司出版社/メーカー: PHP研究所発売日: 2012/08/11メディア: 新書 クリック: 2回この商品を含むブログ (5件) を見る農業、漁業、林業、そして日本の食卓について、養老先生と、先生…

日本人の霊魂観

霊魂観の系譜 (ちくま学芸文庫)作者: 桜井徳太郎出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2012/07/01メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 9回この商品を含むブログ (6件) を見る古来の日本人の霊魂観を探るに、批判的な視点は保持しつつ、民俗学の成果を取り入れて…

明治の元勲伝としての学術書

逆賊と元勲の明治 (講談社学術文庫)作者: 鳥海靖出版社/メーカー: 講談社発売日: 2011/11/11メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見る意外にと云ったら失礼になるだろうが、予想もしない面白さだった。題も内容解説もよくないのではないか。学術的な…

菅啓次郎とボーダー

狼が連れだって走る月 (河出文庫)作者: 管啓次郎出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2012/01/07メディア: 文庫 クリック: 2回この商品を含むブログ (10件) を見る本書について語るのはむずかしい。そう、本書でまず印象に残るのは、ボーダーに身を晒すエ…

ハイテクの見せるゲージ場

ゲージ場を見る―電子波が拓くミクロの世界 (ブルーバックス)作者: 外村彰出版社/メーカー: 講談社発売日: 1997/03メディア: 新書この商品を含むブログを見る電子線ホログラフィー、二重スリット実験*1、アハラノフ‐ボーム効果(AB効果)、マイスナー効果、磁…

奥泉光と太平洋戦争

石の来歴 浪漫的な行軍の記録 (講談社文芸文庫)作者: 奥泉光出版社/メーカー: 講談社発売日: 2009/12/10メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 14回この商品を含むブログ (9件) を見る「浪漫的な行軍の記録」の方が力作だ。退屈による苦痛で途中投げ出しかけた…

「認識論的切断」以前としての向井敏

表現とは何か作者: 向井敏出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 1993/04メディア: ハードカバー購入: 1人 クリック: 1回この商品を含むブログ (3件) を見る浅田彰のいう(アルチュセールの元の意味ではなく)、「認識論的切断」以前の本である。それだから直ち…

川上未映子の「イジメ」小説

ヘヴン作者: 川上未映子出版社/メーカー: 講談社発売日: 2009/09/02メディア: 単行本購入: 12人 クリック: 271回この商品を含むブログ (237件) を見るなんとなく実験的な小説かなあと思って読み始めたのだが、まったく違っていた。「イジメ」を題材にした、…

青柳いづみこの楽しいエッセー集

モノ書きピアニストはお尻が痛い (文春文庫)作者: 青柳いづみこ出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2008/11/07メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 6回この商品を含むブログ (13件) を見る楽に読めるがおつゆたっぷり、という本が読みたかったのだが、これを選…

最底辺労働者について

ルポ 最底辺―不安定就労と野宿 (ちくま新書)作者: 生田武志出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2007/08メディア: 新書購入: 17人 クリック: 171回この商品を含むブログ (87件) を見る本書を読んでよかったとつくづく思う。日本にも、ジョージ・オーウェルや、…

橋本治の「哲学書」

いま私たちが考えるべきこと (新潮文庫)作者: 橋本治出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2007/03メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 23回この商品を含むブログ (39件) を見るそう見えないかも知れないが、本書は実は「哲学書」である。それがそう見えにくいのは…

橋本治の繊細極まりない短編集

つばめの来る日作者: 橋本治出版社/メーカー: 角川書店発売日: 1999/07メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見るそれほど期待もせずに読んだのだが、繊細極まりない短編の数々に、感動させられた。市井の人々の日常を淡々と描いて、例えばモーパッ…

古い科学本でも面白いのはありますよ

ヒマワリはなぜ東を向くか―植物の不思議な生活 (中公新書 (798))作者: 滝本敦出版社/メーカー: 中央公論社発売日: 1986/03メディア: 新書購入: 2人 クリック: 3回この商品を含むブログ (6件) を見る科学読み物として、これは面白い部類に入るものだ。植物の…

米原万理さんの好エッセイ集

不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か (新潮文庫)作者: 米原万里出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1997/12/24メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 63回この商品を含むブログ (110件) を見る傑出したロシア語通訳といわれた故・米原万理さんの出世作。通訳という職業…

経済問題とロジカル・シンキング

ダメな議論―論理思考で見抜く (ちくま新書)作者: 飯田泰之出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2006/11/01メディア: 新書購入: 23人 クリック: 1,054回この商品を含むブログ (177件) を見るネット上ではとても評価の高い本らしく、「ダメな議論」を見抜く、ハ…

これが現象学なのか

これが現象学だ (講談社現代新書)作者: 谷徹出版社/メーカー: 講談社発売日: 2002/11/15メディア: 新書購入: 7人 クリック: 50回この商品を含むブログ (64件) を見る本書について、敢て積極的に語りたいこともないから*1、読んでいて何となく脳裏に浮かんで…

「セカイ系」という言葉を、聞いたことがありますか?

セカイ系とは何か (ソフトバンク新書)作者: 前島賢出版社/メーカー: SBクリエイティブ発売日: 2010/02/16メディア: 新書購入: 28人 クリック: 641回この商品を含むブログ (68件) を見る本書で言及されている作品や固有名詞に、それほど通暁しているわけでは…

ありふれたパターンのラブ・ストーリーを吉田修一が捌くと

7月24日通り (新潮文庫)作者: 吉田修一出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2007/05/29メディア: 文庫 クリック: 16回この商品を含むブログ (48件) を見る吉田修一を読むといつも思うが、現代を巧みに描いて読ませる、力量のある小説家だ。また作風が広い。本書…

ローマ帝国の「愚帝」

ローマ帝国愚帝列伝 (講談社選書メチエ)作者: 新保良明出版社/メーカー: 講談社発売日: 2000/04メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 12回この商品を含むブログ (10件) を見るローマの愚帝と云ってもいろいろだが、よく挙げられる軍人皇帝時代は措いて、それ…

ゲームとリアルの変容

ノーライフキング (河出文庫)作者: いとうせいこう出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2008/08/04メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 29回この商品を含むブログ (49件) を見るこれは傑作だ。子供たちとコンピューター・ゲームという(いってみれば「陳腐…

禅道場でのベラボーな生活

ベラボーな生活 禅道場の「非常識」な日々 (朝日文庫)作者: 玄侑宗久出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2009/08/07メディア: 文庫この商品を含むブログ (5件) を見る著者の禅道場での修行生活のエピソードを書いた、エッセー集。著者は、堅物の禅僧では…

養老孟司はおもしろい

臨床読書日記 (文春文庫)作者: 養老孟司出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2001/01メディア: 文庫 クリック: 3回この商品を含むブログ (7件) を見る理系の人で、これほど個性のある文体を持っている人は少ないだろう。文章に芸があって楽しい。自分とはだい…

天才の代償

世界音痴〔文庫〕 (小学館文庫)作者: 穂村弘出版社/メーカー: 小学館発売日: 2009/10/06メディア: 文庫購入: 11人 クリック: 66回この商品を含むブログ (48件) を見る穂村弘は最近発見した(遅きに失したといわれるかも知れないが)天才であるが、いや、本来…

天才詩人っているんだなあ

求愛瞳孔反射 (河出文庫)作者: 穂村弘出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2007/04/01メディア: 文庫購入: 17人 クリック: 259回この商品を含むブログ (59件) を見る天才です。天才っているんだなあ。 言い忘れていたが、これは詩集です。どうやら失恋詩集…

幸田文は今?

猿のこしかけ (講談社文芸文庫)作者: 幸田文,小林裕子出版社/メーカー: 講談社発売日: 1999/08/10メディア: 文庫この商品を含むブログ (4件) を見る幸田文には感心しないことがない。文体の掘削力が凄い。基本的なデッサンの力も、例えばこんな具合である。 …