ありふれたパターンのラブ・ストーリーを吉田修一が捌くと

7月24日通り (新潮文庫)

7月24日通り (新潮文庫)

吉田修一を読むといつも思うが、現代を巧みに描いて読ませる、力量のある小説家だ。また作風が広い。本書は地方都市での、等身大のラブ・ストーリーというか、恋愛ってこうグチャグチャしてるけど、やめられないというような感じが、よく出ている。高校の同級生と、社会人になってから会って…というのは、完全にありふれたパターンだが、小説の技法がしっかりしているので、とにかく頁を繰らせる力があるのだ。しかし、主人公の女にはいまひとつ共感できないのだが、でもこういう女っているし、こういう女だってそれは恋愛したいよね。あと、ラストはこれでいいのか。「小説の法則」(?)からすると、本屋で出会った男の方へいくべき(?)なのだろうが、彼女は自分で失敗するとわかっているのに、新幹線で東京へ行こうとするのだ。まあ、彼女、それならそれで良し。