つぶやき

「役立たずな知識の有益性」と物理学

山形浩生氏が(勝手に)訳した、フレクスナーの「役立たずな知識の有益性」(参照)はなかなか面白い。物理学の成果の殆どが、有益性とは関係のないところで追求され、得られたと云えるだろう(熱力学などは例外かも知れないが)。現代のハイ・テクノロジー…

震災と或る一ブログ記事

ブログ「憂愁書架」の最新エントリー「最悪の一歩手前」を繰り返し読む。今回の震災について、これまでこれほどの文章を読んだことがない。深く心動かされた。 書き手であるsaiki氏は、日本はあと一歩のところで踏みとどまっている、という現状認識をされて…

或るソシュール本への疑問

沈黙するソシュール (講談社学術文庫)作者: 前田英樹出版社/メーカー: 講談社発売日: 2010/06/10メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 15回この商品を含むブログ (14件) を見る最初にお断りしておくが、自分は本書をまだすべて読み終えていない。また、有名な…

日本人の学問について

最近つくづく思うのだが、概念を操作する思考では、大雑把に見て、日本は西洋に決して敵わないのではないか。西洋の学問と日本の学問を比べてみると、そう痛感せざるを得ないのだ。もちろん時には、日本人でも西洋人に負けない深い(この「深い」というのが…

これが現象学なのか

これが現象学だ (講談社現代新書)作者: 谷徹出版社/メーカー: 講談社発売日: 2002/11/15メディア: 新書購入: 7人 クリック: 50回この商品を含むブログ (64件) を見る本書について、敢て積極的に語りたいこともないから*1、読んでいて何となく脳裏に浮かんで…

冤罪をつくるのは、検察とマスコミではないか

本日付の朝日新聞朝刊(名古屋本社版)から引用する。 「自称障害者団体を郵便割引制度の適用団体と認める偽の証明書が厚生労働省から発行された事件で、虚偽有印公文書作成・同行使の罪に問われ、無罪を主張する同省元局長村木厚子被告(54)の第8回公判は…

寝る前にポリーニを

今日も寝る前にポリーニのピアノを聴く。カール・ベームと合わせたベートーヴェンを聴いた後、ブーレーズの第二ソナタへ。浅田彰はこの演奏を、「最後のピアニストが最後のソナタを弾く」と表現したが、まさしく人跡絶えた、荒涼たる未踏の地だ。しかし、ブ…

等間隔の平行線の中に、針を投げ入れて線と重なる確率について

『国家の品格』が大ベストセラーになった、藤原正彦さんのエッセー集『祖国とは国語』をBOOK OFFで買ってきました。藤原さんはもちろん数学者なのですが、エッセーの面白さもまた無類だということは、周知だと思います。その中で珍しくも(?)、こんな数学…

『思想地図』をぱらぱら繰ってみて

NHKブックス別巻 思想地図 vol.3 特集・アーキテクチャ作者: 東浩紀,北田暁大出版社/メーカー: NHK出版発売日: 2009/05/27メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 42人 クリック: 477回この商品を含むブログ (116件) を見る『思想地図』第3号の冒頭の共同討…

スヴャトスラフ・リヒテル讃

Sviatoslav Richter pianist of the centuryアーティスト: Sviatoslav Richter出版社/メーカー: Deutsche Grammophon発売日: 2009/04/07メディア: CD クリック: 1回この商品を含むブログ (2件) を見るMozart: Beethoven: Grieg: Piano Cto/Sonataアーティス…

サイエンス・ライターを軽んじるな

自己組織化とは何か 第2版―自分で自分を作り上げる驚異の現象とその応用 (ブルーバックス)作者: 江崎秀,林健司,都甲潔出版社/メーカー: 講談社発売日: 2009/04/21メディア: 新書購入: 3人 クリック: 12回この商品を含むブログ (10件) を見る閉じた系ではエン…

障害者を雇うということ

報道ステーションで、粉の出にくいチョークを製造しているという、日本理化学工業なる会社のレポートを放送していたのを見た。何でも、社員の七割だったかが、知的障害者だというのである。もとは普通(?)の会社だったのだが、五十年前に二人の実習生をた…

思いつきでやる物理

万有引力の法則から、太陽のまわりを廻る惑星の軌道が楕円になること(ケプラーの第一法則)を示せるはずだと思い、計算してみる。極座標系で楕円を表わす式の導出に手間どる。(ちなみにそれは、半直弦をp、離心率をe、動径をrとすると、p/r=1+ecosθとなる…

相撲の巴戦の確率

相撲の巴戦の確率を計算してみました。 巴戦というのは同星が三人の場合におこなわれるもので、最初に戦う二人をAとB、残りの一人をCとすると、AとBの勝者がCと戦い、連続して勝てばその人が勝者、そうでなければ最初の敗者とCが戦い、というようにし…

ふたたび貧困問題について

反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書)作者: 湯浅誠出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2008/04/22メディア: 新書購入: 45人 クリック: 434回この商品を含むブログ (216件) を見る前回のエントリーに続き、また現代日本の貧困問題についての本である…

派遣と貧困について、小声に少しだけ

「生きづらさ」について (光文社新書)作者: 萱野稔人,雨宮処凛出版社/メーカー: 光文社発売日: 2008/07/17メディア: 新書購入: 15人 クリック: 96回この商品を含むブログ (60件) を見るリーマン・ショック以前の本だが、派遣労働者と貧困など、問題は既に出…

空爆の歴史

空爆の歴史―終わらない大量虐殺 (岩波新書)作者: 荒井信一出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2008/08/20メディア: 新書購入: 1人 クリック: 8回この商品を含むブログ (18件) を見る飛行機が初めて戦争に用いられたのは第一次世界大戦においてだったが、空爆…

白洲正子と繊細な日本の美

美は匠にあり (平凡社ライブラリー)作者: 白洲正子出版社/メーカー: 平凡社発売日: 2004/08/01メディア: 新書この商品を含むブログ (1件) を見る一時起った白洲正子ブームがいまも続いているかは知らないが、そのブームも当然のことだったと思う。日本の美の…

鈴木謙介を読んで少しサブカルを思う

サブカル・ニッポンの新自由主義―既得権批判が若者を追い込む (ちくま新書)作者: 鈴木謙介出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2008/10メディア: 新書購入: 11人 クリック: 185回この商品を含むブログ (99件) を見る雑多な本であり、雑多な感想を抱いたが、そ…

貧困大国日本

ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)作者: 堤未果出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2008/01/22メディア: 新書購入: 39人 クリック: 606回この商品を含むブログ (374件) を見る弱者を騙し、弱者から毟り取る社会。アメリカはそんな国になってしまったようだし…

大いなる罵倒の書

「情況への発言」全集成〈1〉1962~1975 (洋泉社MC新書)作者: 吉本隆明出版社/メーカー: 洋泉社発売日: 2008/01メディア: 新書 クリック: 14回この商品を含むブログ (4件) を見る「情況への発言」全集成〈2〉1976~1983 (洋泉社MC新書)作者: 吉本隆明出版社/メ…

ジョー・オダネル氏についてのTVドキュメンタリーを見ました

長崎の原爆投下直後の爆心地の写真を撮影した米軍カメラマン、ジョー・オダネル氏についてのNHKのドキュメンタリーを見ました。有名な焼場の前の少年の写真は、確かに以前新聞に掲載されていたのを思い出しました。「戦争を正当化する理由はない」、という凡…

お悔み

西洋古典学者の柳沼重剛氏が7月29日、亡くなられました。享年八十一。当ブログでも、氏の二冊の本について拙い感想を述べさせて頂きました。読みやすいのに格調を失わないという、貴重な散文の書き手であられたと思います。合掌。 ※(id:obelisk1:20080724, …

ミャンマーのサイクロン被害

中国や日本での地震もあって、ミャンマーのサイクロン被害のことが殆ど忘れられている。あまりにも酷い状況なのに。本当はそんな柄ではないのだが、家族と相談して小額だが寄付をする。詳しくはこちら。

比較都市論

都市のコスモロジー―日・米・欧都市比較 (講談社現代新書)作者: オギュスタンベルク,Augustin Berque,篠田勝英出版社/メーカー: 講談社発売日: 1993/11メディア: 新書購入: 3人 クリック: 9回この商品を含むブログ (10件) を見る本書の中に、東京の飯田橋で…

一歩前進となるか

国家公務員制度改革基本法案が成立しそうだ。簡単にいえば、役人から人事権を取りあげる法律。まだ抜け穴はあるし、小さい一歩だが、後に大きな一歩となるかもしれない。 ※http://www.asahi.com/politics/update/0527/TKY200805270381.html

婦女暴行したアメリカ兵の尻拭い

今度は、オーストラリア人女性を婦女暴行したアメリカ兵の尻拭いである。 今日付の朝日新聞朝刊から引用する。 「防衛省は19日、02年に神奈川県横須賀市で米海軍兵から性的暴行を受けたオーストラリア人女性に対し、見舞金300万円を支払った。民事訴訟で賠償…

竹内薫さん

竹内薫の『シュレディンガーの哲学する猫』が文庫化されるというので、嬉しい。竹内さんは主に物理の分野のサイエンス・ライターで、いま日本でいちばん活躍されている方だと思うが、竹内さんの本で最初に買ったのが、これだった。確か、大垣のさほど大きく…

国家財政からの3兆円を何に使うか

今日付の朝日新聞朝刊に、野中広務へのインタヴューが掲載されていたのですが、その一部にこうありました。 「昨年末、神奈川の座間に米陸軍第1軍団の前方司令部が設置されたわけですね。そこに陸自の司令部も集まる。米軍再編のための日本の負担は3兆円。…