ゲームとリアルの変容

ノーライフキング (河出文庫)

ノーライフキング (河出文庫)

これは傑作だ。子供たちとコンピューター・ゲームという(いってみれば「陳腐な」)題材から、リアルの複雑な変容を描いている。自分は面倒くさくて、もうゲームはほとんどやらないが、かつて熱中していた頃は、ゲームに没頭すると世界が変わったかのように感じられたものだ。そんな感覚を、久しぶりに思い出した。
 本書は、ゲームはヴァーチャルだからダメだとか、そんな単純な本ではない。だいたい今では、ゲームをやるのは子供に限らない。既に、人生のあり方すら、ゲームのつくるリアルの変容に大きく左右されていることは明らかだ。それは確かに「貧しい」のだが、このことをはっきり認識しないことには、始まらないのである。そう考えると、本書の描き出す世界の謎が、我々の日常の姿だといっても、あながち的外れとも思えないのである。