奥泉光と太平洋戦争
- 作者: 奥泉光
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/12/10
- メディア: 文庫
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「石の来歴」の方は、雰囲気は「浪漫的な…」に似ているが、まだ未熟な感じがする。
いずれの作にせよ、太平洋戦争と現代とを繋ぎたいという、作者の意図は見える。現代にあろうと、我々(日本人)はみな死人(シビト)だ、というのは、言いたいことはわかるが、やはり一面的な見方であり、シニシズムであろう。まわりの人間は生きていないが、自分は違う、そして現状は絶望的だ、という含意が、どうしても出てきてしまう。我々は精神的に貧しい事実は認めて、それを何とか脱却しようとするしかないのではないか。少なくとも自分は、自虐のつもりではなく、常に自分の貧しさに驚き続けている。それはよくわかっているから、醜い自画像をいまさら見せつけられても、何ともリアクションに困るのである。