ジョルジョ・モランディ

ジョルジョ・モランディ?人と芸術 (平凡社新書)

ジョルジョ・モランディ?人と芸術 (平凡社新書)

いつ頃かだろうか、本の装丁に時折、その静謐な瓶の静物画を見かけるようになって、モランディの名が脳裏に刻みつけられることになったのだった。そこに岡田氏の新書であるから、ちょうどいい機会だったのである。モランディは、イタリアの田舎で地味な静物画を描き続けた、一種の孤高の画家といったイメージであり、実際にも確かにそうではあったのだが、生前から認める人は認めていたのであり、また、そういった人たちに対し画家は、自分のイメージというものに関して相当注意をはらっていたというのなどは、意外であった。ゆえに、画家を慕っていた、そして画家自身も弟子のように思っていた若い批評家が、自己イメージに反するような文章を書いたとき、訂正を執拗に求め、それが容れられないと関係を絶ってしまったほどであったという。本書では、モランディの絵に描かれた壺や瓶にうっすらかかっているようでもある、「埃」をキーワードのひとつにし、その美しさを讃え、またそれが、少なからぬ後進たちに影響をあたえたことを記している。今では、遠い東洋の一国の書物の装丁にしばしば使われていることからも分るように、確かにモランディには普遍性もあるのだ。そのあたりのことも、本書はきちんと説明してくれている。