「進化の中立説」から見たダーウィン
- 作者: 斎藤成也
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2011/03/09
- メディア: 新書
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であるとすれば、この「進化の中立説」があまり知られていないのは、一体なぜなのか。それはおそらく、「自然淘汰」説はとてもイメージしやすいのに対して、「進化の中立説」の正確な理解には数学が不可欠であり、その点でハードルが高いから、というのが理由のひとつだと思う。また、提唱者の木村資生が日本人だから、というのはあまり考えたくはないが、それがないとも云えないだろう。
面白いことに、「進化の中立説」を採ると、意外にも、例外的な現象ではあるが、「自然淘汰」によると考えられる現象もはっきりしてきたらしく、これも学問の雰囲気としていい感じである。
ただ、「進化の中立説」の立場からダーウィンを見るというのは、これはどうなのだろう。それほど強い必然性は感じない。ダーウィンの学説自体と、これまで主流だったネオ・ダーウィニズムも、かなり違う。また本書は、「進化の中立説」の啓蒙書としても中途半端である。これに話題を絞った新書などがもっとあってもよいだろう。
なお「中立説」についての本は、このブログでも以前に取り上げたことがあったと思う。太田朋子のブルーバックスか何か。「中立説」も今ではいろいろ発展しているようなので、専門書以外にわかりやすく詳しい本があるといいのではないか。