菅啓次郎とボーダー
- 作者: 管啓次郎
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2012/01/07
- メディア: 文庫
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別の方から考えてみる。世界は無限に精妙であり、我々の心は、その精妙さを捉える能力を、原理的にもっている。しかし、我々の認識は、実際にはその精妙さの次元には達せず、「制度」によって縮減されて、遥かに低い次元数しかもつことができない。「野生の思考」とは、心にそのような精妙さを取り戻す、ラディカルな方法に他ならなかった筈だ。それを思えば、本書はそれに自覚的であるか否かに拘わらず、「野生」に近づいているとは云えるだろう。あとはそれを、ここ、まさにこの場で、やってみせることだ。我々は必ずしも、地球の裏側まで行く必要はないし、無菌室で家畜化された我々の生の中で、やってみせられなければ、それは何の意味もないだろう。本書が、そのためのスプリングボードになれば、以て瞑すべしではないか。
最後にしかし、ひとつ。本書で一番気になったのは、ゲーリー・スナイダーの存在である。ケルアックの『ダルマ・バムズ』には、かつて自分も感銘を受けたのだった。彼の試みたことは、今でも、今でこそ、様々な人が様々なやり方で、受け継いでいく価値が充分にある。
- 作者: ジャック・ケルアック,中井義幸
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/09/10
- メディア: 文庫
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