夭折の天才数学者・ガロアの生涯
- 作者: 加藤文元
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2010/12/01
- メディア: 単行本
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しかし、そればかりではなかったのであり、第六章の、ガロアの「幻の著作の驚くべき序文」の全訳と解説には洵に興奮した。もちろん解説なしには一歩も進めなかったが、著者に拠れば、ガロアの射程は「代数のガロア理論」ばかりか、代数方程式の理論に留まらない、現代数学の「構造主義的」視点の一端を、完全につかんでいた、というのである。著者のいう「難しさ(=曖昧さ)を対称性のシステムの構造で理解する」というガロア理論の中核は、素人である自分は正確には理解していないが、薄ぼんやりとはわかるし、じつに面白い。こういうことが、もう少し深く理解できるとさらに楽しいだろうし、挑戦したくもなろうというものだ。まったく、数学の面白さには、切というものがないのである。
著者の中公新書の本は、これで三冊目で、どれもハード・コアにして、いつも感服させられる出来だ。著者は偶々自分と同じ歳のようであり、同世代がこういういい本を書いてくれるのは嬉しい。ますますの御活躍を期待しよう。