多様体論でこんなに楽しい本が書けるとは!
- 作者: 野口廣
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2010/08/09
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大雑把に云って、数学のいわゆる「教科書」を読んでいるときの不満は、定理と証明の繰り返しで、ここが重要なのだとか、こんなところに気をつけなさいとか、さらにはここがこんな風に美しいのだとか、そんな類いが書いていないことである。だから、読み通してもあまり内容のない証明だとか、重要なのにさらりと書いてあるだけの定理だとか、とにかく「風景」がわからないことが多い。もちろん専門の研究者なら、そういうことは自分で見出していかねばならないのだが、専門家でない者には、そこいらに配慮がほしいのだ。
で、本書だが、まさしくそういったことを、トポロジーについて行なっているのである。証明はないが、といっても内容は本格的なもので、理学部の学生が読んでもおかしくないのだけれども、専門家でなくともある程度の知識があれば、多様体の世界を遊びまわる、至極楽しい読書になるだろう。個人的には、ファイバー・バンドルがどういう歴史的過程で登場してきたのかとか、多様体として見たリーマン面とかなど、とても腑に落ちた。確かにかなり難しい本ではあるが、前著ともども、合わせ読んでみると面白いと思う。
- 作者: 野口廣
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2009/08/10
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