2010-01-01から1年間の記事一覧

「エルナニ合戦」だけでなく、戯曲そのものも面白いぞ

エルナニ (岩波文庫)作者: ユゴー,Victor Hugo,稲垣直樹出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2009/07/16メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 10回この商品を含むブログ (6件) を見る文学上の新旧対立の結果としての「エルナニ合戦」は、どの仏文学史にもある有…

スクリーチと高山宏コンビの『春画』

春画 片手で読む江戸の絵 (講談社学術文庫)作者: タイモン・スクリーチ,高山宏出版社/メーカー: 講談社発売日: 2010/07/12メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 16回この商品を含むブログ (8件) を見る高山宏訳。スクリーチと高山のコンビなので、本書は期待し…

「社会主義」も「革命」も棄てない柄谷行人

世界史の構造 (岩波現代文庫 文芸 323)作者: 柄谷行人出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2010/06/25メディア: 単行本購入: 9人 クリック: 232回この商品を含むブログ (75件) を見る久しぶりの柄谷行人の新著であり、大著であって、思わず手に取らぬわけには…

アーサー・ケストラーの傑作小説

真昼の暗黒 (岩波文庫)作者: アーサーケストラー,Arthur Koestler,中島賢二出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2009/08/18メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 8回この商品を含むブログ (20件) を見る一気に読了、圧倒的な読後感だ。まずはスターリニズム批判…

生物の形態を決定するのは「袋」である

形の生物学 (NHKブックス)作者: 本多久夫出版社/メーカー: NHK出版発売日: 2010/05/26メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 1人 クリック: 12回この商品を含むブログ (5件) を見る生物における形態というのが、いかにしてDNAレヴェルと繋がっているかとい…

ゲーテ地質学論集・鉱物篇

ゲーテ地質学論集・鉱物篇 (ちくま学芸文庫)作者: ゲーテ出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2010/06/09メディア: 文庫この商品を含むブログ (5件) を見る木村直司氏の編訳に成るゲーテの自然科学論集も、『色彩論』『形態学論集・植物篇』『形態学論集・動物…

米原万理さんの好エッセイ集

不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か (新潮文庫)作者: 米原万里出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1997/12/24メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 63回この商品を含むブログ (110件) を見る傑出したロシア語通訳といわれた故・米原万理さんの出世作。通訳という職業…

日本は農業大国だ。農水省は嘘をつくな

日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率 (講談社+α新書)作者: 浅川芳裕出版社/メーカー: 講談社発売日: 2010/02/19メディア: 新書購入: 23人 クリック: 778回この商品を含むブログ (83件) を見る最近読んだ中で、これほど感動させられた本はない。…

或るソシュール本への疑問

沈黙するソシュール (講談社学術文庫)作者: 前田英樹出版社/メーカー: 講談社発売日: 2010/06/10メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 15回この商品を含むブログ (14件) を見る最初にお断りしておくが、自分は本書をまだすべて読み終えていない。また、有名な…

斎藤環の『家族の痕跡』

家族の痕跡 いちばん最後に残るもの (ちくま文庫)作者: 斎藤環出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2010/06/09メディア: 文庫購入: 5人 クリック: 165回この商品を含むブログ (16件) を見る著者はフロイト=ラカン的な精神分析を「無謬」のものとして用い、そ…

経済問題とロジカル・シンキング

ダメな議論―論理思考で見抜く (ちくま新書)作者: 飯田泰之出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2006/11/01メディア: 新書購入: 23人 クリック: 1,054回この商品を含むブログ (177件) を見るネット上ではとても評価の高い本らしく、「ダメな議論」を見抜く、ハ…

青柳いづみこの見事な音楽評論

音楽と文学の対位法 (中公文庫)作者: 青柳いづみこ出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2010/05/01メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 6回この商品を含むブログ (7件) を見る洵におもしろい。優れた音楽家としての楽曲分析も(自分にはちょっと詳しすぎる…

ポアンカレ予想の解決はいかにしてなされたか

ポアンカレ予想―世紀の謎を掛けた数学者、解き明かした数学者作者: ジョージ G.スピーロ,志摩亜希子,永瀬輝男,坂井星之,塩原通緒,鍛原多惠子,松井信彦出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2007/12/19メディア: 単行本購入: 6人 クリック: 141回この商品を含む…

日本人の学問について

最近つくづく思うのだが、概念を操作する思考では、大雑把に見て、日本は西洋に決して敵わないのではないか。西洋の学問と日本の学問を比べてみると、そう痛感せざるを得ないのだ。もちろん時には、日本人でも西洋人に負けない深い(この「深い」というのが…

吉田秀和さんに教えられたシベリウス

チャイコフスキー&シベリウス:ヴァイオリン協奏曲アーティスト: プレヴィン(アンドレ)チョン・キョンファ,チョン・キョンファ,ロンドン交響楽団,プレヴィン(アンドレ),シベリウス出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック発売日: 2009/11/11メ…

坂本龍一と中沢新一に見る希望のありか

縄文聖地巡礼作者: 坂本龍一,中沢新一出版社/メーカー: 木楽舎発売日: 2010/05/24メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 73回この商品を含むブログ (20件) を見る題名どおりの本ですが、二人はノスタルジーで縄文遺跡を見て廻っているわけではありません。で…

日本の大問題はそんなに簡単に解けるのか

日本の大問題が面白いほど解ける本 シンプル・ロジカルに考える (光文社新書)作者: 高橋洋一出版社/メーカー: 光文社発売日: 2010/05/18メディア: 新書購入: 19人 クリック: 255回この商品を含むブログ (36件) を見る読み終えてみて、わからなくなってしまっ…

行動経済学というのは面白そうだ

行動経済学―感情に揺れる経済心理 (中公新書)作者: 依田高典出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2010/02/01メディア: 新書購入: 5人 クリック: 78回この商品を含むブログ (30件) を見るこれはワクワクさせられる、いい本だ。行動経済学というのは、ゲーム…

アンディ・ウォーホルの芸術

ウォーホルの芸術 20世紀を映した鏡 (光文社新書)作者: 宮下規久朗出版社/メーカー: 光文社発売日: 2010/04/16メディア: 新書 クリック: 23回この商品を含むブログ (12件) を見る2000年に名古屋で開かれた回顧展を観にいっているので、ウォーホルと向き合う…

チンパンジーは人間に近種なることについて

進化の隣人 ヒトとチンパンジー (岩波新書)作者: 松沢哲郎出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2002/12/20メディア: 新書購入: 1人 クリック: 7回この商品を含むブログ (10件) を見るちょっと古い本だが、これは面白い。著者は、「天才チンパンジー」などと云…

もし田村隆一がブログを書いていたら

詩人のノート (講談社文芸文庫)作者: 田村隆一,佐々木幹郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 2004/10/09メディア: 文庫 クリック: 4回この商品を含むブログ (20件) を見るまあエッセイ集ということになるのだろうが、実は読み始めて直ぐ、「ブログの日記みたい…

トルクァート・タッソの『エルサレム解放』

タッソ エルサレム解放 (岩波文庫)作者: トルクァート・タッソ,A.ジュリアーニ,鷲平京子出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2010/04/17メディア: 文庫 クリック: 35回この商品を含むブログ (14件) を見る言わずと知れた西欧文学の古典中の古典であり、西欧絵…

中原昌也は本当に嫌々書いているのか?

名もなき孤児たちの墓 (文春文庫)作者: 中原昌也出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2010/04/09メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 10回この商品を含むブログ (11件) を見る何とも分類するのがむずかしい作家だ。シュールレアリズムっぽい、自動書記的なとこ…

「実力派」絲山秋子

ニート (角川文庫)作者: 絲山秋子出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング発売日: 2008/06/25メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 55回この商品を含むブログ (59件) を見る短篇集。どろどろのめり込んだコミットメントでもなく、村上春樹風のデタッチメ…

エデルマンと技術的難曲

リスト:ピアノ・ソナタロ短調、シューベルト:幻想曲「さすらい人幻想曲」アーティスト: セルゲイ・エデルマン(Pf),リスト出版社/メーカー: オクタヴィア・レコード発売日: 2010/03/25メディア: CDこの商品を含むブログ (1件) を見る進境著しいピアニスト、セ…

舞城王太郎と感覚の麻痺

山ん中の獅見朋成雄 (講談社文庫)作者: 舞城王太郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/03/15メディア: 文庫 クリック: 6回この商品を含むブログ (46件) を見るうーん、これはどう云ったものか。まず、才能は明らか。しかし、作者お得意の暴力として、ここ…

ヘレニズム時代のギリシャ小説

カイレアスとカッリロエ (叢書アレクサンドリア図書館)作者: G.Molini´e カリトン,G.Molini´e Chariton,丹下和彦出版社/メーカー: 国文社発売日: 1998/06メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る作者であるカリトンは、小アジアのアプロディシア…

ケプラー予想

ケプラー予想作者: ジョージ・G・スピーロ,青木薫出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2005/04/27メディア: 単行本 クリック: 11回この商品を含むブログ (39件) を見るケプラー予想とは、(三次元)空間を半径の等しい球で埋めていくとき、一定空間内に占める球…

「感性の人」としてのヴァレリー

ヴァレリー――知性と感性の相剋 (岩波新書)作者: 清水徹出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2010/03/20メディア: 新書 クリック: 20回この商品を含むブログ (25件) を見る一気に通読。これまで専ら「知性の人」と言われてきたヴァレリーだが、本書は、詩人の愛…

熊本家族旅行

熊本へ二泊三日の家族旅行に行ってきました。予報では三日間とも雨でしたが、天気はなんとか持ちました。旅日記は備忘録で。