中原昌也は本当に嫌々書いているのか?

名もなき孤児たちの墓 (文春文庫)

名もなき孤児たちの墓 (文春文庫)

何とも分類するのがむずかしい作家だ。シュールレアリズムっぽい、自動書記的なところがあるが、無意識を顕在化させようというよりは、意識的に表層を攪乱している。四角四面の「真面目な」文章でもって、それをずらし、破綻させるのだが、それでなげやりなのが、また笑わせるのだ。一種の芸があって、芸で書いていくタイプの作家だと思う。「ドキュメント 授乳」など、じつに下らなくて笑ってしまう。このあたり、どうしても町田康を思わせるところがあるが、同じような駄目ぶりでも、中原の方が才能がなさげ(という芸風)で、ちょっと深刻ぶっているところが違うか。さても、いやいや書いているという風だが、おもしろいので、大きなお世話かも知れませんが、これからもたまには書いてくださいな。