「実力派」絲山秋子

ニート (角川文庫)

ニート (角川文庫)

短篇集。どろどろのめり込んだコミットメントでもなく、村上春樹風のデタッチメントでもなく、セックスを女性の立場から、こんなふうに書いた作家というのは他に居るのだろうか。心理の描写がとても細やかだ。泣きそうになるほど愛おしい作もあれば、スカトロそのものを即物的に描いた作もあるが、「大人の小説だなあ」と思わされる点では、共通している。自分だってたぶん著者とそう変らない歳だと思うが、読んでいると自分が中学生にでもなったかのような気がして、とてもこう大人という感じがしないのが恥かしい。ガキの頃、大人の世界ってこういうものかなと思っていたような、そんな時空が広がっている。とにかく、素敵におもしろい、で感動的な「純文学」だ。