エデルマンと技術的難曲

リスト:ピアノ・ソナタロ短調、シューベルト:幻想曲「さすらい人幻想曲」

リスト:ピアノ・ソナタロ短調、シューベルト:幻想曲「さすらい人幻想曲」

進境著しいピアニスト、セルゲイ・エデルマンの新譜が出た。今回はリストのロ短調ソナタと、シューベルトの「さすらい人」幻想曲で、ともにヴィルトゥオジティを必要とすることで知られている名曲であり、双方ともポリーニの超絶的な演奏があるから、どうしても引き比べてしまうだろう。
 まず、個人的に好きな、「さすらい人」幻想曲から聴いてみた。実に美しい演奏で、技巧も快感を覚えるほど迫力がある。構築性もがっちりしたものだ。何の不満もなし。これは、今までのエデルマンの録音の中でも、最高だと云えるものかも知れない。リヒテルポリーニの演奏と比べても、決して引けをとらない名演だと思う。
 リストも美しい。前にも書いたが、エデルマンのピアノの音はとても魅力的だ。弱音から強音まで粒立ち、輝いている。リストにはあまりにきれいすぎるくらいで、むしろ、もう少しきたない音の方がいい部分もあるかもしれない。そうすると、もっとデモーニッシュな演奏になると思うのだが。しかし、実に音楽的な演奏であることは間違いない。技術的にもまったく問題なく、迫力がある。
 リストにわずかに不満があるとすれば、経過的な部分が手馴れたように聞こえてしまうところがあるのが、残念といえば残念だ。今までも特に曲の始めのあたりにそう感じるときがあって、このピアニストには、興が乗ってくるとどこまでも素晴しくなっていくような、一種天才肌のところがある。そうしたところを、もっと聴きたい。
シューベルト:さすらい人幻想曲、他

シューベルト:さすらい人幻想曲、他

リスト:ピアノ・ソナタ

リスト:ピアノ・ソナタ