ケプラー予想

ケプラー予想

ケプラー予想

ケプラー予想とは、(三次元)空間を半径の等しい球で埋めていくとき、一定空間内に占める球の体積の総和が最大になるのは、(よく知られた)面心立方充填あるいは六方最密充填*1(両者は同じものである)の場合である、というものである。これは問題としてはわかりやすいが、その解決までは四百年近くかかったという難問であった。解かれたのは一九九八年のことで、トマス・ヘールズとサミュエル・ファーガソンが、これを肯定的に解いた。問題含みだったのは、証明がコンピューターを用いたものだった、という一点である。コンピューターを用いて解かれた難問として有名なのは、他に「四色問題」があり、この「ケプラー予想」も同じく、「こんなのは証明ではない」という非難を浴びせる数学者もいたけれども、最近ではコンピューターを使った証明に対しても、数学者たちは寛容になってきたように見える。
 本書は一般の読者に向けたものであり、説明は丁寧にしようという努力が窺えるが、内容はそう簡単ではない。ただ、充分に雰囲気は味わえると思う。竹内薫の本に拠れば、この問題は、一つの球のまわりに(中心のと同じ半径の)何個の球が接せられるかという形で、物理学の「超ひも理論」にも関係しているらしいことを、付記しておこう。

*1:この構造を取る結晶が多くあるので、高校の物理あるいは化学で充填率を計算することがある。