ポアンカレ予想の解決はいかにしてなされたか
- 作者: ジョージ G.スピーロ,志摩亜希子,永瀬輝男,坂井星之,塩原通緒,鍛原多惠子,松井信彦
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2007/12/19
- メディア: 単行本
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ポアンカレ予想の問題自体は、さほど難しい概念で記述されているわけではない。すなわち、「三次元球面と同じホモロジー群を持つ三次元多様体は、三次元球面と同相である」ということだ。勿論これだけでは分りにくいかもしれないが、本書で詳しく解説されているし、それも充分に理解できるものだと思う。(本書ではないが、宇宙に手で両端を持ったひもを投げかけ、ひもを手繰り寄せていくとき、何にも引っかからずに一点に縮められるか、などと解説されることもある。)実際、トポロジーの分野の(少なくとも)基礎的な部分は、十九世紀までの数学がわからなくとも、何とかなるようなところがある。
それにしても、これほど単純な定理を解決するのに、百年以上の時間がかかったとは驚きだが、そのあたりの困難さを、本書はよく伝えてくれる。文章もよみやすく、なによりポアンカレ予想のむずかしさを理解できるような人が、このようなよく出来た一般書を書けるのだから、ありがたい話だ。日本のサイエンス・ライターも頑張れといいたい。