日本は農業大国だ。農水省は嘘をつくな
日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率 (講談社+α新書)
- 作者: 浅川芳裕
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/02/19
- メディア: 新書
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本書によれば、農業の現状を「兼業農家」で見てはいけないという。彼らのほとんどは農業以外の「本業」で生活しており、農業をやらなくても食べていけるのに、米さえ作っておけば、国からの補助金がいただけてしまうのである。いわば「擬似農家」なのである。ゆえに彼らは、意欲ある「専業農家」に対して害にすらなる。既に意欲ある農家は、生産性を向上させ、高品質の商品を作ることによって、農業を充分に魅力的なビジネスにしているのである*3。
本書で驚かされる、というよりは、またかとウンザリさせられるのは、農水省が日本の農業の現状を意図的に悪化させたくてしようがない、という点である。その方が口が出せるから。これは少し前ならば、ちょっと信じられなかったような話なのだが、官僚が重要視するのは日本のよりよい将来などではなく、一にも二にも省益と利権だということで、これは最近では常識になった。本書には、その利権の話もたくさん出てくる。いわば本書の抉り出した問題は、日本の行政問題の典型となっているのだ。暗澹とさせられるのは、日本の官僚らというのは別に特殊な日本人などではなく、我々と何の違いもない、日本人の典型だということだ。私もあなたも、官僚になったら恐らく、彼らと同じことをしてしまう可能性が高い。結局、問題の根源はここなのだ。だからこそ、せめて官僚でない者は、事実をベースに、批判的精神を陶冶せねばならぬのだろう。本書が貴重なのも、その役割を見事にはたしているからである。