これはワクワクさせられる、いい本だ。
行動経済学というのは、
ゲーム理論の延長上にあるという感じで、個人の行動を数学化するという、いま旬の学問らしい。今までの経済学は、個人が完全に合理的な行動をするという仮定の下に構築されていたが、実際はもちろん合理的でないことも多いわけであって、そういうのも含めて数学化するという試みなのである。いったいそんなことが可能なのか、とも当然思われるだろうが、加法性が成り立たない確率や、時間選好率、危険回避度といった概念を巧みに用いたりした、なかなか巧妙な着想がいろいろあって、おもしろいのである。古典的な
ゲーム理論(例えばいわゆる「
囚人のジレンマ」など)が、実際のデータを解析すると、必ずしも現実を説明しないことが多々あるというのも、刺激的な話である
*1。最近では、
脳科学と
行動経済学を融合したような研究も、なんだか恐しげだが、盛んになってきているという話もある。
本書は
行動経済学を満遍なく網羅したような本ではなさそうだが、現場の雰囲気に満ちていて、著者の熱がこちらに伝わってくるようだ。若い人が読んだらいい刺激になるだろうが、果して
中公新書などを手にしてくれるかしらん。そこのところが唯一心配かなあ。いや、繰り返すが、いま経済学は旬ですよ、ほんと。