- 作者: 斎藤環
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2010/06/09
- メディア: 文庫
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本書は理論書というよりは、エッセイ風の社会評論とでもいった趣きである。時事的な発言はとても鋭いし、「若者文化に詳しい」などいわれる点も(本書ではさほど多くはないが)そのとおりである。しかし、逆にそういう点のためか、時事も若者文化もあまり知らない自分には、いつものことながら、著者の核心が自分をしっかり捉えない。いいとは思うが、どうでもいいとも思う…などという感じか。
しかし、目の醒めるような一節もあったことを書いておかねば、片手落ちだろう。こんなのです。
「…『愛の形式』が異なることを考えるなら、男女で『結婚の意味』が異なってくるのも当然である。」
「…男(筆者は例外として)は結婚に『所有の永続化』を求め、女は『関係の永続化』を求める。だから男にとっては結婚は『ゴール』にして『あがり』なのだが、女にとっては『スタートライン』でもありうるのだ。いや、もっと極端な言い方をしよう。男性にとっての結婚とは、最高の獲物を捕獲し、所有の焼き印を押して自分の牧場に囲い込むことである。…しかし女性にとっての結婚は、まずなによりも、新たな関係のはじまりでもある。そこで所有の欲望がありうるとすれば、それはむしろ『関係の結果』としての子どもを所有することにより多く向けられるだろう。このように結婚とは、そのはじまりの時点から、大いなるすれ違いをはらんでいるものなのだ。」(p.235-236)
だから、男が浮気するのは、囲い込む獲物が一匹増えただけだし、また女が母として子供を過保護するのも、当然だというわけである。いや、これを読んで怒ってはいけませんよ。それが既に、語るに落ちているのです。