「千夜千冊」で紹介されていたものである(
参照)。著者の気合が熱い本だ。著者は、会社は株主のものであるとする「株主資本主義」は間違っている、という。その下では、経営者は
ROE(
株主資本利益率)ばかりを気にし、短期で
ROEを上昇させるため、
内部留保を貯めるよりも、それを配当金として分配した方がよいということになる。そうすると、株価は確かに上昇してCEOは莫大な金を手にするかもしれないが、一方で、会社の資金は研究開発費などに当てられなくなり、会社は勢いを失うことになる、というのだ。著者のバックボーンにあるのは、会社は(ヘッジ・ファンドのように)資金を操作するだけで、必要以上の金を儲けるためにあるのではない、むしろ人は、働くことで「
自己実現」し、「公」のためにもなるような、そんな労働をすべきだ、というものである。これは、ナイーヴだと笑って済ませてはいけない「哲学」だと思う。実際、日本人の労働観は、もともと(理想的には)そういうものだったのだし、それは貴重なのではなかろうか。著者の議論は、はっきりした「哲学」を土台として、しかも徹底的にロジカルである。さらに、生き馬の目を抜くような
ベンチャー・ビジネスの中で成功してきた著者の言うことだからこそ、重みがあるのだとも思う。