ポスト・モダンまでの資本主義

「欲望」と資本主義-終りなき拡張の論理 (講談社現代新書)

「欲望」と資本主義-終りなき拡張の論理 (講談社現代新書)

資本主義の記述としてさほどの新味はなかったが、よく纏められた本。著者は資本主義の誕生を、ウォーラーステインの「近代世界システム」の成立した大航海時代に採っている。ヨーロッパ、イスラム圏、アジアが繋がり、各ブロックの間の差異によって資本主義が発展していくと考えるのである。そのような資本主義は、しかし、十九世紀で終ってしまうという。(それが、マルクスの予言が当らなかった原因である。)二十世紀になると、資本主義の原動力に、「消費」が大きな役割を果たすようになる。そして、「消費」を促すのが、さまざまな形で次々に引き起こされる新たな「欲望のフロンティア」だというのである。それは日本ではバブル期に絶頂に達し、そこで崩壊してしまう。で、ポスト・モダン、という訳だ。
 それで、我々に必要なのは、その次の処方箋である。残念ながら、それはまだ見つかっていない。