- 作者: 森政稔
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2008/05/01
- メディア: 新書
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この本は、全体的に見て、ある一面的な解説をして「これが真実だ」と煽動するのではなく、性急に著者の意見を主張するよりは、多面的に、説の長所と短所を共に述べるという行き方であって、この方が初心者には適切だと思う。だからまあ、このやり方でいけばOKというような単純な選択はないのがよくわかるが、それは実際、そうであろう。
ポピュリズムについてもかなり詳しい言及があるが、これは本書が、二〇〇五年の総選挙における小泉政権の大勝利を受けて、それに対して書かれ始めたという経緯があるからで、これについても啓蒙された。小泉自民党に投票して自分の首を絞めることになったといわれる若年の低所得者層は、一体なぜそのような行動を採ったのか。著者はここに、リフレクシヴィティ(再帰性、反省性)の低下を見ている。リフレクシヴィティとは、自分の欲求を外から眺めて相対化することを指す。著者はいう、「それぞれ不満を持ちながら互いに利益を共有していない者たちが、『ぶち壊す』ことについてだけは意見を一致させることができる。そしてその結果、しばしば以前よりも不愉快な環境で生きていくことを選択させられるのである。」これは今でも大切な問題だと思う。