- 作者: 柴田宵曲
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2002/07/09
- メディア: 文庫
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と、そういう調子で正岡子規の生涯を語っているのであるが、また子規の凄いことといったらない。三十代の半ばという短命であり、しかもその晩年は病で横臥したままで、後の日本文学に巨大な影響を与えたのであるから。それでも子規は、やりたいことの百分の一も出来なかったというのである。布団から起き上がれなくなり、死んでしまいたいと思うほどの苦痛に耐えながらも、そのような状況においてすら何かしらの楽しみを見出してしまうのには、驚くほかない。子規は、同じ頃に出た『一年有半』と自分とを見比べて、兆民がダメで自分と違うのは、自分には「美」の世界がある点だということを書いているが、この子規が最初に見出した「美」が彼自身に大きな力を与えたのは、我々としても深く心に刻んでおかねばならぬことだと思う。