神西清訳のチェーホフ

カシタンカ・ねむい 他七篇 (岩波文庫)

カシタンカ・ねむい 他七篇 (岩波文庫)

名訳者といわれる神西清の訳した、チェーホフの短編集。辛辣な観察に成るチェーホフの短編は、おそらくモーパッサン以上だと思うが、今ではあまり読まれてないようで、勿体ないと思わずにはいられない。訳者によるチェーホフ論も興味深く読まれた。チェーホフは、およそ激しい感情に流されるということがなく、殆ど非情とすら言える態度を常にとる人だったというが、作品も確かにさもありなんという風情である。むかし日本のある作家が、「ここまで人生がわかってしまうと、現実生活はどうなってしまうのだろう」、というようなことを書いていたのを思い出す。