ハイデッガーの芸術論

芸術作品の根源 (平凡社ライブラリー)

芸術作品の根源 (平凡社ライブラリー)

やはり難しい本だ。
 ハイデッガーは芸術を、「物質性」の方面及び「真理」の方面から考察する。
「作品がそれ自体を立て返すところ、そして作品がそのようにそれ自体を‐立て返しながら現れてこさせるものを、われわれは大地と名づけた。……作品は、大地そのものを一つの世界という開けたところの内へ引き込み、保持する。《作品は大地を大地であるようにさせる。》」
「芸術とは真理を[が]作品の‐内へと‐据えることである。」
「ヴァン・ゴッホの絵画は、道具、すなわち一足の農夫靴が真理においてそれで〈ある〉ものの開示である。この存在するものはその存在の不伏蔵性の内へと歩み出る。存在するものの不伏蔵性を、ギリシア人たちはアレーテイアと名づけた。」
不伏蔵性というのは「顕われていること」というような意味である。
 ハイデッガーが「芸術」という語で指しているのは、典型的にはヘルダーリンの詩のことである。よって、一見どこか反動的な感じもするのだが、また一方で「芸術」を何か剥き出しなものと思わせるから、二十世紀以降の芸術にも関係がないことはないかもしれない。ハイデッガーが現代美術に関心を持っていたかは知らないが、もし実見していたら何と言ったことであろうか。